松下幸之助は「ひとつの夢を持つこと」を説いた

問わず語りに語った経営、そして人生

けどな、そういう時にもその人に対してどれほどの感謝の気持ちというか、情というか、そういうものがあるかどうかということや。そういう気持ちがないと、切ったことが全体のためにもならないし、その人のためにもならん。結局は恨みを買うだけということになる。今、植木屋さんに枝を一本切ってもらったけど、やっぱりその枝に、ああ、今までありがとう、という感謝の気持ちを心のなかで言わんといかん、そう、わしは思っている。

経営を進めていく時に大事なのは、事に当たってまず冷静に判断すること、それから情を添えることやな。この順番をちゃんとわきまえておかんと失敗するんや。冷静に考えずに情で判断してやっても、うまくいかん。事の決定がいい加減になるからな。けど、冷静に判断して行動をして、ただそれだけだと、冷たくなっていかんね。やるべきはやる。しかし、それだけではなく、心を添えてあげる。気配りをしてあげる。そういうことが大事だということや。経営者として大事な条件のひとつや。うん、そうや。冷静にということは、素直になって考えるということやな。こだわらず、とらわれず、かたよらず、今考えていることが正しいのか、今やろうとしているのが、自然の理法にかなっておるか、そういうことをまず考えることやな。

ひとつの夢を持って生きる

この庭は、今ではカネで到底買えんね。今造ると言っても第一、この庭が造られてから、もう90年ほど経っておるんや。時間は買えんからな。今造っても、すぐにこういう景色の庭にはならんもんな。

そこの松は、なかなかりっぱな松やな。どれほど昔の松なんやろ。150年以上は経っとるかもしれん。まるで、能舞台に描いてある松の絵のようやなあ。あんなになるまでには相当な時代が必要やね。しかし、見とると、松の芽つみは細かくて大変やな。あれ、いちいち手で松の葉をとっていくんやな。細かい仕事やから根気がいるなあ。

ところで、あそこに紅葉の木があるやろ。池の向こう側の、うん、右の奥や。あの木の下に、小さい木があるな。あの小さい木をどこか別のところに移してもらおうか。どうも足元がすっきりせんな、あの小さい木があると。この庭は大きい木の足元に、あんまりいろいろ植えないようにしておる。足元がすっきりとしておらんといかんね、なんでもそうやけど。

まあ、お茶でも飲もうか。いつも忙しくて、こうしてゆっくり庭を眺めることはあんまりないけど、たまにはこうやって庭を眺めるのもいいな。

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