向こうの、あの高い杉と杉の間から、南禅寺の山門がみえるのがええな。秋になると落ち葉をたく煙が一筋、すっと空に昇る景色は、まさに一幅の絵やね。いまでもね、きみ、あそこに山門の屋根が見えなかったら、この庭の景色も、これほどよくはならんかもしれん。まあ、本来ならば、南禅寺さんに使用料を払わんといかんところや。
あの屋根にあがって、石川五右衛門という大泥棒が、京の町を眺めながら、絶景かな、絶景かなと言ったと言われているけど、実際は違うらしいな。けどまあ、それほど有名な山門や、タダで使わせてもらっとることになるけど、ええやろ。ハハハ。
生産者の使命とは?
さっき言った生産者の使命ということな、いわば水道の水のように、「いい物を、安く、たくさんつくる」ということは、いつの時代でも大事なことやで。
このごろ、日本は物が豊かになったから、そういうことは、もう考えないでいいのではないか、ということをいう人も出てくるかもしれんが、もし、そういうふうに考える人が出てくるとすれば、その人はその生産者の使命について、よう考えておらん人やな。
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