「水道哲学」の真意、松下幸之助はこう語った

経営の神様が問わず語りに語ったこと

昔な、わしが二つか、三つのときに和歌山の家にな、大きな蔵があったそうや。いや、むろん、わしは覚えておらんが、会社がほどほど大きくなったころ、昔、あなたの家でお手伝いをしておったものですが、といって訪ねてきた人がいてな、そのおばさんが言うには、その蔵には主(ぬし)と言われていた蛇が一匹住み着いておったそうやが、ある日、わしの兄さんや姉さんたちが集まって、まあ子供だから遊び半分ということもあって、その蛇を石なんかで殺してしまったというんや。

あなたは小さかったから、それに加わらなかった。遠いところから眺めておっただけやったということや。それでな、その人が言うには、あなたの兄弟が早死にしたのはそれが原因です、あなたが成功したのは、それに加わらなかったからです、と、そういうことを言いにきたことがあったな。まあ、そうかどうか知らんが、ああ、そういうこともあったんかと思ったことがあったな。

白い蛇もわしは見たことがあるよ。商売をはじめたての頃やったな、阪神百貨店があるやろ。あの脇を歩いておったら、わしの前で白い蛇が道を横切ってな、いや、そんなに大きくはなかった。西宮に家を建てているときも、わしは見ておらんが、大工さんたちが蛇が出たというて、大騒ぎになって、わしも見に行ったんやけど、そのときには、どこかへいってしもうて、おらなんだけど。それから一度も出てこんかったな。そういうこともあった。

まあ、だからどうと言うことでもないけど、蛇はいじめんほうがええようやな。蛇の下を通ったということは縁起がよかった、とそう考えよう。わしも、百六十歳までいけるかもしれん。ハハハ。

個性的人材が会社を強くする

それにしても、この庭にはいろいろな木があるわなあ。杉もあるし、楓もあるし、松もあるし、ようけあるな。あとはどういう名前か分からんけどな。あそこの松の向こうに見える、わりと大きな木があるやろ。あれはなんという木かなあ。苔がきれいやな。この苔はなかなか手入れが難しいんやで。いまも植木屋さんが、ああやって水を撒いてくれておるけど、いつも水をやっておらんとな。湿気が大事なんやな。京都はちょうど湿気があるから、苔が育つわけや。夏の京都は蒸し暑いといわれるんやけどね。東京ではなかなか育たんらしい。カラッとしているところがあるんやろうな。

この苔の種類も、たくさんあるそうやな。そうか、この庭だけでも、十数種類くらいはあるのか。そんなにあるか。こういうように、この狭い庭を見ただけでも、いろいろなものが存在していることがわかるわね。けど、だから面白いと言えるんや。これがね、みんな一種類だけで、あとは何もないということであれば、この庭もつまらんわな。

庭だけではない、この世の中、なんでもそうやな。たとえば花でも、バラならバラだけしかない、この世にバラという花しかないということになれば、面白くないわね。バラもあれば桜もある、百合もあれば菊もあるというように、たくさんある花が、それぞれに特徴ももって、それぞれに精一杯存在しておるというところがいいわけや。

人間でも、同じことが言えると思う。みんな同じ顔形をしていて、同じことしかしなかったら、これは相当気味悪いわな。けど、そうではない。いろいろな人がいて、いろいろなことを考えて、いろいろなことをして、だからいいわけやな。個性とか、その人の持って生まれた特質とか、誰ひとり同じ人はおらんわな。それが、いわば自然の姿というものやな。百花繚乱という言葉があるやろ。

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