科学者かパイロットか、新人かベテランか
「宇宙飛行士の要望を知り、満たすことです」と醍醐はさらっという。しかし、それこそが宇宙飛行士との信頼関係を築くうえでもっとも大事であり、いちばん難しいことなのだ。
宇宙飛行士訓練では「伝えるべき内容」や「習得すべき技術」という“ミニマム”の目標は、ISS参加国の国際調整により決められている。だがどの深さまで、どのように教えるかについては各国に任されるし、誰に対しても一律に行うわけではないという。
「宇宙飛行士と一口に言っても、キャラクターや経歴、バックグラウンドはそれぞれ。それを把握せずに、教科書どおりに教えようとすれば、『そんなの知っている』とか『そこまで知る必要はない』などと言われてしまう。
だからまず、こちらが必ず提供すべき項目を伝えるとともに、『ここを詳しく』という宇宙飛行士の要望や希望を満たすことが大事だと思っています」
自分のニーズを把握し、考慮してくれると伝われば、宇宙飛行士とインストラクターの間に信頼関係が生まれる。一方、ニーズを把握せず、的はずれなことを言えば信用されないのは、世の中のほかの仕事とまったく同じだと醍醐は言う。
たとえば、と例に挙げてくれたのは、パイロット出身の宇宙飛行士とサイエンティスト出身の宇宙飛行士の違いだ。
「サイエンティストは、自分の興味があるところを深く聞いてきます。でも訓練時間には限りがあるので、『ゴメン、今は時間がないから、後にしましょう』と言うこともある。でも本人にできるだけ満足してほしいので、あらかじめ訓練を長めに組むようにする。一方でくどくど説明するのを好まないのが、パイロット上がりの宇宙飛行士。『あなたが教えたいことだけ教えなさい』と言われたりします」
ISSは、世界15カ国が参加する国際協力プロジェクト。「きぼう」日本実験棟では、日本人だけでなく他国の宇宙飛行士も実験を行う。米国、ロシア、ヨーロッパ、カナダから宇宙飛行士が訓練のため日本を訪れる。だが人種による違いはそれほどないという。
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