"宇宙ママ"、ゴールの見えない日々の越え方 新世代リーダー 山崎直子 元JAXA宇宙飛行士
「行ってきます」――。その女性は家族に別れを告げ、高度400キロメートル上空の宇宙へと旅立った。日本人の女性としては最も高い場所に“出張”したことになる。その人の名前は山崎直子さん。
1999年にJAXA(独立行政法人 宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士候補に選ばれてから約10年後、2010年4月にスペースシャトル「ディスカバリー号」で宇宙へと旅立った。当時、日本では、子供を持つ母親としては初めての宇宙飛行士ということでメディアの注目を集めた。
宇宙から帰ってきた後、2011年8月にJAXAを退職。現在は内閣府の宇宙政策委員会で委員を勤める傍ら、講演活動などに奔走している。
宇宙飛行士といえばエリート中のエリート。実力だけでなく、運や忍耐力も試される困難な職種だ。
山崎さんが宇宙飛行士というキャリアを歩む中で学んだこととは。また、その宇宙飛行士を辞めたいま描く、新たなキャリアとは。”日本一多忙な母”だったかもしれない山崎さんの言葉には、ビジネスパーソンにも役立つ、生きるヒントがちりばめられていた。
ゴールが見えない10年間を、どう耐えるか
――宇宙飛行士の選抜は大変な競争率です。いったいどんな能力があれば、そんな大きな夢をつかめるのでしょうか。
JAXAのホームページで公開している宇宙飛行士の条件は、一般的なことばかりです。自然科学系の大学を出て、3年の実務経験があることが条件。あとは英語がしゃべれること、健康であること、協調性があることなど、常識的なことばかりです。
その中で何が本当に必要かは、時代のニーズに応じて変わってきていますが、私たちの訓練にある評価項目は、自己管理、リーダーシップ、フォロアーシップ、状況把握の4つに分かれます。中でも、特に状況把握という部分が重要です。周囲の状況を見つつ、自分の立ち位置、役割をしっかり把握すること。これは宇宙飛行士として重要な要素です。
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