"宇宙ママ"、ゴールの見えない日々の越え方

新世代リーダー 山崎直子 元JAXA宇宙飛行士

宇宙飛行士は、マルチタスクの能力を鍛えるために、戦闘機のようなジェット機を操縦する訓練を受けます。飛行機の操縦は、まさにマルチタスクの凝縮。地図をずっと見てばかりいると、飛行機の姿勢が傾いてしまうので、地図は2秒ぐらいで切り上げて、周りの景色を見たり、パネルの数値を見たり、外のタワーと交信したりといろいろなことをやっていかなければなりません。

――山崎さんが書いた本を読んでいると、「人生をどう生きるか」という深いテーマと、「何とかなるさ」という楽観論が並んでいる印象を受けます。

宇宙へ行くまでの道のりは長く、実際に行けるかどうかもわからない。その中で訓練が大変というよりも、家庭を含めたトータル・マネジメントがいちばん大変でしたね。

心掛けていたのは「宇宙に行く」という目的を忘れないこと。私が目標を見失ったら、周りにいるほかの人も余計、迷ってしまう。だから、何年かかるかわからないけれども、焦らず、いずれは宇宙へ到達できるという目標を持ち続けていました。

輝かしいキャリアの裏には、人並みならぬ努力と苦労もあった(出典:NASA)

忙しかったりして、ついもうちょっと手伝ってほしいとか、私が不満や愚痴を言ったら、周りからは「じゃあ、辞めちゃえば」とか100倍になって返ってくるんですね(笑)。

自分がやりたいと思ってやっている以上は、そこで不満は言えません。それは訓練のことだけではなくて、家庭のことも含めて。周りで起きていることについて、責任を持たなければならないと強く感じました。

男性と違って、仕事や訓練にだけ集中できるわけではありません。ほかのこともマネジメントしていかないと、約10年間という期間はやり過ごせません。だから長い目で見たときに、家庭など訓練以外のことも含めた、トータル・マネジメントにいちばん気を遣います。

――世間は「ママさん宇宙飛行士」というイメージを期待しました。ご本人としてはいかがでしょうか。

ママさん宇宙飛行士という言葉は、あまり好きではありません。私自身は使わないし、「使わないでください」とお願いしてきました。女の人で、お母さんでもあるのに、ちゃんと仕事もやっていて、「あ、すごいわ」みたいなイメージがあるじゃないですか。

でも実際は、いろいろな人に支えられている。いちばん近くにいる主人にしわ寄せが行ったと思うし、彼や両親や保育園、ベビーシッターといろいろな人の力があったから、やってこられたわけです。

――宇宙飛行士になった人は、何度も宇宙に行くケースも多いと思うのですが、山崎さんは1度だけ。宇宙飛行士をやめるのは、もったいないと思いませんでしたか?

日本人の宇宙飛行士でJAXAを離れたのは、私が初めて。やはり、かなり迷いました。

ちょうど第2子を出産するタイミングだったというのもひとつの要素です。非常勤の形で残るなど、ほかの選択肢も考えたのですが、中途半端に片足を突っ込んでいるより、立場をはっきりさせたほうがいいこともあります。

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