ハーバードで瓦解した「今までの価値観」 恋愛にキャリアに生き急ぐ、ハーバード女性たち
第5回の連載から、私の失敗の経験談を使って女性特有の「遠回りの罠」についてお話ししています。女性は「嫌われたくない病」と環境への「過剰適応病」が強い傾向にあるようです。外部環境が大きく変わるような機会がないと、自分の意思と能力を客観的に評価できない、いわゆる「ゆでガエル症候群」になりやすいのではないかと思います。
最近は、男性でもこの傾向の方が多いようです。しかしながら、いつかは出産をしたいと思う女性の場合は特に、キャリアの早めの時期に実績をつくる必要があると思っています。この「早回しのキャリア」にとって、上記の症状はあきらかに阻害要因となってしまうのです。これが「遠回りの罠」。
初日に、「上げ底枠での入学」と気づく
ここからは私がハーバードとマッキンゼー(次回の連載に掲載)という、それまでとは異なる環境に身を置いたことによって初めて、自分が社内市場価値に過剰適応し視野狭窄になっているということに気づけた、という事例をお話します。
1998年、私はMBAを取得するために31歳でハーバードビジネススクール(以下、HBS)に留学しました。そこでの日々は、大小さまざまなショックの連続でした。
まず初日の授業に行ってみたら、指定された席が教室中央の島の最前列。先生から最もよく見える席です。もしやと思って周りを見渡してみると、やっぱり外国人かつアメリカ生活が長くない生徒は、発言時にあたりやすい席が指定されている……。
HBSでは生徒の人種、性別、経歴の多様性を重んじるため、入学に際して少数派は多少有利になるとは聞いていたので、「ああ、私は上げ底枠で入学できたんだな」と機会をもらえたラッキーさをかみしめながらも、最下層からのスタートであることを痛感しました。
しかも授業は、発言の質と量で成績の50%が決まるディスカッションスタイル。議論の核となる印象的なコメントを短時間に詰め込もうと、「われこそは」と思っている優秀かつ血気盛んな若者が、比喩や引用やラテン語など、あらゆる語彙や話法を駆使してトップギアで切り込んでくるわけです。
私は帰国子女ではあるので、自分の英語がそれなりに通用すると思っていました。しかしそれは日本人としてうまい、というレベルでしかなく、この程度の英語力ではとてもおぼつかないと早々に悟りました。いわば「早稲田大学の弁論部に入ってしまった、日本語がそこそこできるアメリカ人」のような状態だったのです。
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