ハーバードで瓦解した「今までの価値観」 恋愛にキャリアに生き急ぐ、ハーバード女性たち

拡大
縮小

このように苦あれば楽ありの学生生活だったのですが、私がHBSで経験したいちばん大きな出来事は、大げさにいえば「今までの価値観の瓦解」でした。

それまで私は、日本を代表する企業のひとつである三菱商事から来たことに大きな誇りを持っていました。GDP世界2位の日本を代表する会社に帰属していること、会社の売り上げ規模が大きいこと、格付けなども高く安定していることは素晴らしいと信じ切っていたわけです。ところがHBSの友人たちにとっては、「大きくて安定しているなんて、なんてつまらないの?」ということになる。

「あなたは三菱商事の女性の中ではトップの地位にいると言うけれど、あなたの上には何人の上司や先輩がいるの? いつリーダーシップをとれるの? 経営者になるには何年かかるの?」と聞かれたのは決定的でした。なぜなら私の上には何千人もいるし、経営陣に加わるには少なくとも50代にならないと難しい。それには最短でもあと15年はかかる。

「15年? 何のためにHBSに来たの?」

強いパンチを受けたような気がしました。毎日毎日、経営者の疑似体験をするケース討議を行い、よいリーダーになるためには……という洗脳にも近いような「すりこみ」の日々を送っている。それなのに、リーダーシップをとる機会にすぐにチャレンジしないとは、私は何をしているんだろう。

既存のロールモデルに過剰適応していた私

友人たちにこの質問を突きつけられた背景には、確かに時代もあったと思います。私が留学していた1998〜2000年は、まさにアメリカにベンチャー企業がたくさん立ち上がった時代でした。卒業後のキャリアは、コンサルティング、投資銀行、プライベートエクイティファンドなどのプロフェッショナルファームに行く人も多かったものの、在学中を含めベンチャー企業を立ち上げる人が非常に多かった時代です。

もちろん、私もHBSの入学願書には、自分のキャリアゴールなど詳細に記載していたので、自分なりにキャリアについて考えているつもりでした。しかしながら、それは三菱商事の中で優秀と言われるにはどうするべきか、という一定の枠組みの中での既存のロールモデルへの過剰適応だったのではないか、とやっと気づけたのです。

次ページ時間軸という考え方が欠落
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT