家具だって、何でもいいわけじゃない
オフィスのテーブルや椅子に関しては、僕は事前に作戦を練っていた。通常、オフィス家具メーカーに発注しそうなところ、地元メーカーの家具を依頼するよう、話をもっていったのだ。
「いいね。新しいオフィスは全部この家具にしなよ」
社長・宮坂にそう言ってもらえるように、ヤフー幹部たちが石巻を訪れたとき、地元で家具を作っている「石巻工房」を見学コースにさりげなく入れておいた。
手作りならではの味わい深いテーブルやソファだから、ひと目見たら気に入ってもらえるだろうという確信があったからこそのことだ。
ちなみに今、六本木のヤフー本社の受付ロビーにある色とりどりのソファも、すべて「石巻工房」のものだ。
こうして誕生した「石巻復興ベース」は、いろいろと工夫をしたかいあって、自然と人が集うオフィスとなっている。
入口付近は駐車場だったのだが、オフィスの考えに共感してくれた三陸河北新報社の西川社長がウッドデッキやベンチ、時計台まで備えてくれた。
もちろん、ぴかぴかのオフィスの中に閉じこもっている僕らではない。「地域に溶け込もう」という須永の方針で、石巻に移住してからは毎朝、ビルの周囲でゴミ拾いをしている。そうしながら、地元の人たちと自然とあいさつを交わしつつ、少しでも地域に溶け込めるよう、地道かつ地味な活動を続けている。
東京のオフィスでは、内部の掃除も業者さんにお任せしていたが、ここではそれも自分たちで行っている。これは意外といい経験で、地元の生活やリズムに近づくためにすごく役に立っていると感じる。
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