仕事をド忘れする人は脳を信用しすぎている

脳のメモ帳をとことん生かす仕事術

今後「脳トレ」ブームのようにワーキングメモリを鍛える「ワートレ」ブームが起きるかもしれませんが、くれぐれもこの点にご注意ください。

新人が「メモをとれ」と叩き込まれるわけ

ここまで書いてきた内容で、あなたが普段感じる「覚えた!」という感覚が実に頼りなく、はかないものであることが理解できたと思います。

仕事でメモリーミスを避けたいのであれば、脳の限界に対して精神論で逆らっても意味はありません。この歴然たる事実をまず直視することが前提になります。

記憶力がいい人は別に脳のつくりが高性能なわけではなく、「自分の記憶の限界はどれくらいか」「どういった状況のときに忘れやすいか」「忘れないためにはどれくらい繰り返すことが必要か」といった「自分の脳の習性」を知ったうえで、効率よく対策を講じているだけなのです。

どうやったら忘れないようになるか、ではなく、どうやったら忘れっぽい自分をカバーできるか。この発想の転換ができるかがカギです。

よく成功者の体験談などでふと思いついたアイデアを「紙ナプキンになぐり書きした」といった話が出てきますが、たとえ紙ナプキンのなぐり書きであっても、それを書いて残しておくかどうかは、大きな分かれ道になります。これは、「人の記憶力は頼りないのだから、ムダな抵抗はさっさとやめなさい」という先達の教訓でもあります。

この「メモ」こそ、もっとも原始的で、もっともわかりやすい記憶補助ツールであり、仕事効率化ツールでしょう。メモをとる習慣がない人からすれば、メモを書く手間を省いて仕事を少しでも効率化している気になっているかもしれません。

しかし、メモに書かずに頭で「覚えておかなきゃ」と思うこと自体がワーキングメモリのムダ遣いであり、仕事の非効率化の要因になっていることに気づいていません。

ワーキングメモリは短期的に記憶を保存するだけではなく作業台でもあるので、覚えておかないといけない量が増えるほど作業台が狭くなり(= 注意力を消費し)、複雑な情報の処理ができません。

その点、メモに書き残せば、即座にワーキングメモリを解放できますので、仕事の精度やスピードも上がるのです。

私もかつてはサラリーマンでしたからよくわかりますが、上司が新人に対して「メモを常備しなさい」と口うるさく言うのは、いままでの新人たちの姿や、上司の若い頃の実体験からどうせ忘れることが目に見えているからです。とくに新人のころは新たに覚えないといけないことが膨大にあります。記憶力が悪そうだから言っているのではありません。

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