仕事をド忘れする人は脳を信用しすぎている 脳のメモ帳をとことん生かす仕事術

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わたしたち人間は、今こうやって読んでいる日本語の知識をはじめ、日々の経験など膨大な記憶を蓄えています。しかし、すぐに、かつ明確に記憶できる数となると、こんなにも少ないのです。

「これは大事なことだから覚えておこう」と注意を向けることで、情報をつかみつづけることは可能です。しかし職場では新しい情報がひっきりなしに入ってきます。ですから実際にはいくら注意を向けていても、不意に新たな情報が入ってくると脳は新しい情報に注意を向けてしまい、古い情報をパッと手放してしまいます。

徐々に忘れるなら「やばい、そろそろ忘れそうだからメモしておこう(または先に片づけておこう)」と対策が打てますが、突如、忘れてしまうので扱いが面倒なのです。

簡単に忘れてしまうなら最初から過信しなければいいのですが、注意を向けている間は「確実に覚えた」と強い実感が湧きます。その感覚は、あなたが長期記憶として覚える記憶の「覚えた」感覚と変わりません。

だから錯覚するのです。

そしてこれこそ、「さっきまではっきりと覚えていたのに、いつのまにかド忘れしていた」というミスが起きるメカニズムです。メモリーミスをなくす第一歩は「いまはしっかり覚えている感覚があるけど、注意を外すとすぐに忘れてしまうんだよな」とワーキングメモリの特性を認識することです。

トレーニングで増やせるのか?

「そんな大事なワーキングメモリなら、容量をトレーニングで増やせばいいじゃないか」という人がいるかもしれません。たしかに最近では「ワーキングメモリトレーニング」や「ワーキングメモリを鍛える」といった趣旨の本を見かけます。

ただ、私はワーキングメモリ自体を鍛えられないと考えています。「ワーキングメモリトレーニング」を行って、そのスコアがよくなったとしても、注意のキャパシティが増えているとは限りません。そのトレーニングの経験を積むことで、ワーキングメモリへの負荷を減らしているだけかもしれないのです。であれば、行ったトレーニングは楽になっても、それに関連しない作業にはプラス効果は出ません。

実際、ワーキングメモリの容量を増やす学術的な研究はたくさん行われていますが、その効果は実験室レベルにとどまっています。

「残念ながらワーキングメモリトレーニングが、実験室課題を超えて、たとえば、学業成績や日常生活の課題にまで効果があると報告した研究は今のところまだない」(『ワーキングメモリと日常』より/T・P・アロウェイ+R・G・アロウェイ編著/北大路書房)

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