仕事をド忘れする人は脳を信用しすぎている

脳のメモ帳をとことん生かす仕事術

さて、なぜ人はメモリーミスを犯すのでしょうか?もちろんミスをしようと思う人はいません。メモリーミスは記憶に対する「期待」と「現実」のギャップから生まれます。あなたの「しっかり覚えた!」「忘れないだろう」という目論見に反し、脳が思いのほか早く、あっさり忘れてしまうことが原因なのです。

最近、記憶の研究が進む中で、覚えた直後に急速に忘れてしまう原因がわかってきました。それは、「ワーキングメモリ」という記憶です。これが実はメモリーミスを起こす主犯格です。

ワーキングメモリは「脳のメモ帳」にたとえられ、「作動記憶」「作業記憶」などと訳されます。情報を長期間にわたって貯蔵する「長期記憶」とは異なり、何かの目的のために「一時的に」貯蔵される領域であることが特徴です。

コンピューターでいえば、「長期記憶」に当たるものがHDD(ハードディスク)で、ワーキングメモリがRAM(メモリ)です。

HDDはデータを長期保存する場所ですが、RAMはソフトやアプリが稼働するにあたってデータを一時的に蓄えたりする「作業領域」。ソフトの動作が遅くなったりフリーズしたりするときは、このRAMが一杯になっているケースが大半です。

人の脳でこのRAMと同じような働きをするのがワーキングメモリなのです。たとえば、今この瞬間もあなたのワーキングメモリが働いています。いや、働いているからこそ、この文章が読めるのです。

文章を読んで理解するためには、直前の文章の内容を記憶しておくことが必要です。もし、読んだそばから本の内容を忘れてしまったらどうなるでしょう?活字になっていれば引き返して読むことができますが、引き返してばかりいたらいつまでたっても前に進むことはできません。

また、会話であればさらに大変です。言葉は話すそばから消えていきますから。相手が発した言葉をワーキングメモリに記憶しているからこそ、言葉をつなぎながら理解することができるのです。

このようにワーキングメモリはすぐに、しかも明確に情報を記憶できるすぐれものです。では、それだけ便利な記憶が、なぜメモリーミスを起こすのでしょうか。この「すぐに」そして「明確に」覚えるという特徴が落とし穴なのです。

ワーキングメモリの容量は思いのほか小さい

なぜこれだけ便利な記憶がメモリーミスを引き起こすのか? それはワーキングメモリの容量がとても小さいからです。

新しい情報が入ってくると、古い情報がはじき出されてその瞬間に忘れてしまいます。ワーキングメモリに入ると、すぐに、しかも明確に記憶できています。しかし、ワーキングメモリから追い出された瞬間、今度は逆にスパッと忘れてしまいます。

しかも、ワーキングメモリはいくら気合いを入れても、その容量を増やせません。ワーキングメモリが貯蔵できる事象は、せいぜい7つ前後(7±2)といわれています。最近の研究ではもっと少なく、4±1という説もあるほどです。

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