統治の根幹をどう作る?選挙改革の"選択肢"
勝者総取りの「多数制」、小党分立の「比例制」

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多数決型と合意型、二つの民主主義

36の民主主義国家における様々な政治制度を実証的に分析し、多数決型民主主義と合意型民主主義という二つの類型を見出している。
A.レイプハルト・著 『民主主義対民主主義』 (2005年、勁草書房)

もちろん、多数決型・合意型それぞれに分類される諸国が、該当する特徴を全て有するわけではない。大まかな共通点が存在するということにとどまるが、民主主義の特徴を理解するには極めて有用だ。

このような分類に当てはめると、1990年代以前の日本は合意型の特徴を数多く持っていた。中選挙区制の選挙制度が分立的な政党システムを生み出し、自民党の弱い内閣と派閥均衡の国会による統治が、政府レベルの特徴としてあったのだ。

それが90年代のさまざまな改革で、小選挙区制の導入とともに、内閣への権限集中が進むなど、政府レベルでは多数決型への移行が進んだ。強いリーダーシップを発揮した小泉政権は、まさにその成果と言える。

しかし同時に、政府の外ではむしろ権力の分立が進んでいる。第二院である参議院は存在感を増し、地方分権改革や中央銀行の独立性が強調される。さらに裁判所の違憲審査への要請もある。どちらかが常に優れているわけではないが、多数決型の権力集中を進める一方で、合意型の権力分立を強調すれば、両者のメリットを損ねることになりかねない。

選挙制度改革は、どのような統治機構のあり方が望ましいかを考えることとも密接に関連する。このさい比例制を導入し、権力分立を重視した統治機構を実現するのは、一つの選択肢だろう。

逆に、権力集中を意味する多数制を明示的に選びなおすとすれば、政府の外での権力分立を見直す契機としてもよいのではないだろうか。

 

【初出:2013.3.2「週刊東洋経済(2030年あなたの仕事がなくなる)」

 

(担当者通信欄)

ここのところ、「選挙制度改革」に関するニュースをしばしば目にし、耳にします。日本の衆院選では小選挙区と比例代表部分から成る選挙制度が採用されていますが、今回自民党から、比例代表部分を減らした上で、第2位以下の政党に優先的に配分する枠を設けるという提案がありました。

記事からわかるように、小選挙区制(多数制)と比例代表制は、それぞれ異なる型の民主主義に結びつくものです。 と、それを踏まえれば、異なるものの組み合わせ、ただでさえ複雑な「混合制度」をさらに改革することが、いかに難しいかも窺えます。↓の最新記事で考えるのが、まさにその「混合制度」の意味。ぜひあわせて読んでみてください。

砂原庸介先生の「政治は嫌いと言う前に」最新回は2013年3月25日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、最新スマホ活用術)」に掲載です!
【いいとこ取りのはずだった、混合制度の意図せざる効果】
小選挙区と比例に重複立候補できる
日本の衆院選、改革案はでてきているけれど、そもそも「混合制度」の選挙制度に、"いいとこ取り"は可能なのか?"悪いとこ取り"のおそれは?

  

売れ行き好調、 砂原先生の最新著作! 『大阪―大都市は国家を超えるか』(中公新書) 橋下改革の最前線にある大阪市立大学から、地方自治の専門家として国家と対峙する大都市「大阪」の来歴と今後を議論します!

 

砂原 庸介 政治学者

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すなはら ようすけ / Yosuke Sunahara

1978年7月生まれ。2001年東京大学教養学部卒業、東京大学大学院 総合文化研究科 国際社会科学専攻にて2003年修士課程終了、2006年博士後期課程単位取得退学。2009年同大学院より、博士(学術)。財務省・財務総合政策研究所の研究員、大阪市立大学などを経て、2013年より大阪大学 准教授。専攻は行政学、地方自治。地方政府、政党の専門家として、社会科学の立場から学術研究に注力する。傍ら、在阪の政治学者として、地方分権や大阪の地方政治について、一般への発信にも取り組む。著書に、『大阪―大都市は国家を超えるか(中公新書)』(中央公論新社、2012年)、『地方政府の民主主義―財政資源の制約と地方政府の政策選択』(有斐閣、2011年。2012年日本公共政策学会 日本公共政策学会賞〔奨励賞〕受賞)、共著に『「政治主導」の教訓:政権交代は何をもたらしたのか』(勁草書房、2012年)、『変貌する日本政治―90年代以後「変革の時代」を読みとく』(勁草書房、2009年)など。
⇒【Webサイト】【ブログ sunaharayの日記】【Twitter(@sunaharay)

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