多数決型と合意型、二つの民主主義
もちろん、多数決型・合意型それぞれに分類される諸国が、該当する特徴を全て有するわけではない。大まかな共通点が存在するということにとどまるが、民主主義の特徴を理解するには極めて有用だ。
このような分類に当てはめると、1990年代以前の日本は合意型の特徴を数多く持っていた。中選挙区制の選挙制度が分立的な政党システムを生み出し、自民党の弱い内閣と派閥均衡の国会による統治が、政府レベルの特徴としてあったのだ。
それが90年代のさまざまな改革で、小選挙区制の導入とともに、内閣への権限集中が進むなど、政府レベルでは多数決型への移行が進んだ。強いリーダーシップを発揮した小泉政権は、まさにその成果と言える。
しかし同時に、政府の外ではむしろ権力の分立が進んでいる。第二院である参議院は存在感を増し、地方分権改革や中央銀行の独立性が強調される。さらに裁判所の違憲審査への要請もある。どちらかが常に優れているわけではないが、多数決型の権力集中を進める一方で、合意型の権力分立を強調すれば、両者のメリットを損ねることになりかねない。
選挙制度改革は、どのような統治機構のあり方が望ましいかを考えることとも密接に関連する。このさい比例制を導入し、権力分立を重視した統治機構を実現するのは、一つの選択肢だろう。
逆に、権力集中を意味する多数制を明示的に選びなおすとすれば、政府の外での権力分立を見直す契機としてもよいのではないだろうか。
【初出:2013.3.2「週刊東洋経済(2030年あなたの仕事がなくなる)」】
(担当者通信欄)
ここのところ、「選挙制度改革」に関するニュースをしばしば目にし、耳にします。日本の衆院選では小選挙区と比例代表部分から成る選挙制度が採用されていますが、今回自民党から、比例代表部分を減らした上で、第2位以下の政党に優先的に配分する枠を設けるという提案がありました。
記事からわかるように、小選挙区制(多数制)と比例代表制は、それぞれ異なる型の民主主義に結びつくものです。 と、それを踏まえれば、異なるものの組み合わせ、ただでさえ複雑な「混合制度」をさらに改革することが、いかに難しいかも窺えます。↓の最新記事で考えるのが、まさにその「混合制度」の意味。ぜひあわせて読んでみてください。
砂原庸介先生の「政治は嫌いと言う前に」最新回は2013年3月25日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、最新スマホ活用術)」に掲載です!
【いいとこ取りのはずだった、混合制度の意図せざる効果】
小選挙区と比例に重複立候補できる日本の衆院選、改革案はでてきているけれど、そもそも「混合制度」の選挙制度に、"いいとこ取り"は可能なのか?"悪いとこ取り"のおそれは?
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