権力の望ましいあり方、集中させるか分立か?
多数制か比例制か、という選挙制度をめぐる問題は、政府全体の統治機構のあり方とも関わってくる。どのように代表を選ぶかという問題は、統治の根幹に関わるからだ。
政治学者のアレンド・レイプハルトは、議会制民主主義を採用する諸国の比較分析から、多数決型民主主義と合意型民主主義という類型を見出した。
前者の「多数決型民主主義」は有権者の多数派の利益に従う政治を、後者の「合意型民主主義」はできるだけ多くの有権者の意図に沿う、つまり多数派の範囲を拡大することを強調する。選挙制度は、このような民主主義の類型の基礎となるのだ。
レイプハルトが整理した両者の特徴は、下の表に掲げてあるとおりだ。重要なのは、権力の集中あるいは分立をどう考えるかという点である。
多数決型の特徴は、政府与党・内閣への権力集中にある。議会で圧倒的多数を制していなくても、相対多数でさえあれば、強大な権限を付与される。そして、議会と行政をめぐる関係や、広く見れば司法や中央銀行との関係なども、内閣への権力集中を助けるしくみとなることが多い。
合意型では、権力分立が志向される。比例制が生み出す、多くの政党により構成された連立政権は、過半数を大きく超える「大連立」として形成されることが多い。また、二院制や中央から独立した地方政府、強い裁判所など、権力分立を支える諸々の制度が合意型民主主義を補完する。
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