会社組織とは「男vs男」の官能劇場である 上野千鶴子さんが語る「女の処世術」
でも夫に言わないと、絶対に変わらないよね。なのに彼女たちは、「でもいいんです、夫に言ってもどうしようもないから」と。相手を追いつめてないんです。「いいんです、あたしたちもう終わってるんです」って。だから、「えっ、終わった男と、これからの後半生、一緒に過ごすの?」と言うと、ドキッとしたような顔をする。「あなた、心許せない人を相手に、パンツ脱げるの?」って。
でもね、そう言うと、今度は、ほろほろと泣くの。でもね、泣くくらいなら、直接、自分の夫に言ったら、と思うわけ。夫婦の関係って、私が若かった頃から、こんなに変らないのか、とがく然とします。
「祖母力」を発揮させてはならない
生まれたばかりの赤ちゃんは、ひ弱で、泣きわめいて、自己チューで、自分で生きることができない小さなモンスターみたいなもの。そんな人生最大のテンパリ期に、手も足も出さない男がそばにいるのは、妻にとっては、すさまじいストレスです。妻が育児で追い詰められたとき、夫は助けてくれたかというと、助けてくれなかった。そのときの恨みつらみは、その後の人生で、フラッシュバックしてくる。
だから、私は子どもが出来たばかりの若い男性には、こう忠告します。「いま、子育てをしないと、あとでずっと妻から恨みを言われるよ」と。
一方で、あまりに夫が使えないので、かわりにおばあちゃんが赤ちゃんの面倒を見ることで解決する、というのも聞きます。いわゆる祖母力を発揮する、というパターンです。
けれども、おばあちゃんが子育てに乗り出せば、夫は育児からとめどなく手を引きます。そうすると夫婦のあいだに、葛藤も起きないかわりに、交渉も起きない。となると、解決策に見えて、夫婦関係を見直すきっかけを奪うことになるかもしれない。
一時的にはよくても、長い目で見ると、夫婦関係は壊れてゆく可能性もあります。祖母力を発揮したい同世代の女にはそう忠告しますが、ドキンとした顔をする。言われてみないと気がつかないのでしょうね。(後編に続く)
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