会社組織とは「男vs男」の官能劇場である 上野千鶴子さんが語る「女の処世術」
でも、会社などでこの方法を使うときには、くれぐれも気をつけてくださいね。なぜなら、相手をもてあそぶと、その後、ものすごく恨まれるから。男にとっては、戦いに負けることよりも、公衆の面前でコケにされることのほうが、ずっと屈辱なんです。
そもそも敵というのは、自分より大きい事が多いものです。だから、そんな大きな壁にまともに激突したら、へとへとになって、やりたいことをやるエネルギーが残らなくなります。だから、むしろ、立ちはだかる壁は迂回せよ、と私は言っています。個人の持ち時間やエネルギーには限りがあるから、自分の本当にやりたいことをやるためには、フェイントをかけたり、迂回したり、絡め手を使ったりでいく。ときには、けもの道を通ったりと、省エネ戦法を使ってね。
会社で働いている女性たちからは、「私が提案したことを、上司が自分の手柄にしてしまうんです」という話をよく聞きます。勤め人の人生で何がつらいかというと、バカな上司に使われること。最近ようやく、それをパワハラと表現できるようになりましたが、無能で横暴な上司に仕えるつらさについては、身に覚えがある人も多いはず。
でも、私はこう思うの。たとえ回り道をしてでも、自分が獲得したかったことが実現すれば、いいじゃないか、って。だから、いろいろな手段を使ってでも、時間がかかっても、最終的に望んでいるものを手に入れることが大事なんです。
男は、あくまで男に認めてほしい
だいたい、女性がこれほど会社のなかで苦労する理由のひとつは、日本の旧来型の会社が、ホモソーシャルな組織だから。江戸時代には葉隠れの恋というものがありました。要するに、男の“恋”の相手は男なの。女を女にするのは男、でも男を男にするのは男、というわけね。
男が男へ抱く思いと、男が女へ抱く思いとでは、根本的な非対称があるんじゃないかと。男がパワーゲームに夢中になる理由とはなにか。組織で権力争いしているおじさんたちを長年じーっと観察して、あるとき気づいたんです。
男は男に認めてもらいたい。時代劇のワンシーンではないですが、一戦を交えている最中、つばぜり合いで一瞬止まったときに、相手の男から、「おぬし、できるな」と耳元でささやかれたときの、ゾクゾク感。その官能にくらべたら、女とのエロスなんて、なんでもないのかも知れませんね(笑)。
仕事にやりがいをとか、生きがいを、という人は多い。やりがいを仕事にしたいです、と言う就活生も多いと聞きます。でもね、自分がやりたいことに、他人は基本的におカネは払わない、と思ったほうがいい。
他人さまの懐(ふところ)からおカネを出してもらう、というのは、他人の役に立つことを提供するからこそ。
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