そこで個体識別番号を調べて、1日でもと畜日から長いものを選ぶというのがひとつの手だ。私としては、スーパーならばと畜してから30日程度の肉が程よいと思うが、一般のスーパーだと14日より早い段階で売るところが多いようだ。そうした肉は、きれいではあるが味や香りは乏しい可能性があるので要注意である。ちなみに、熟成期間が短いからといって、一度スライスした肉を自宅冷蔵庫で置いておいても、熟成はせず腐敗していくので、買ったらすぐに食べること。
いかがだろうか、今まで存在は知っていたけれども、個体識別番号を検索して、その牛の肉に思いを馳せたことがないならば、ぜひトライしていただきたい。ただし、今回は出生日からと畜日まで、そしてと畜日から購入日までという単純な数字のみに着目した。これは初歩の初歩であって、牛肉のおいしさに関してはもっと複雑な要素が折り重なっている。あくまでこれは基本だと考えていただきたい。機会があればまた、牛肉のおいしさの見分け方についてわかっていることをお伝えできればと思う。
気になった牛肉の個体識別番号をメモする
読者の皆さんには今後、「A5」やブランド名に惑わされるのではなく、ぜひ「おいしさ基準」で肉を見ていただきたいと思う。とはいっても、それは体験して取捨選択できるようになるしかない。そのためには、飲食店などで「おいしい!」または「まずい!」と思った牛肉の個体識別番号をメモして、あとで調べるといったことをするとよいかもしれない。
それと重要なのは、販売店に対して「こないだのあれはおいしかった」「脂がくどかった」というような評価をきちんと伝えることだ。何も言わなければ「消費者は喜んでこれを買っていった」と思うだけだ。消費者の感想は何よりも強い。ぜひ、あなたがおいしいと思う牛肉について、流通側に伝えてほしい。そこから、おいしい牛肉が出回る社会が創られるのだ。
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