日銀・黒田新総裁の行動を、ズバリ予測しよう 意見は聞くが、安倍首相や財務省にも従わない?

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中曽・岩田副総裁の役割とは?

金融政策に対する考えは白川方明前総裁とほぼ同じだと思うが、外からの印象はまったく違うだろう。白川氏は良くも悪くもガッツがあった。中央銀行総裁というポストに、彼としては、最も忠実に仕事をした。

それが、多くの人に不評であったわけだが、中曽氏は、同じ意見だが、基本的に「意見を述べるチャンスがあれば、そう述べる」というスタイルだろう。そして、それは、現状の日銀出身の副総裁としてはベストのスタイルだ。

今は、どんな正統的な主張をしても、主張すれば、日銀理論として叩かれる。いま最も重要なのは、黒田新総裁の信頼を得ることなのだ。彼は、これまで、日銀の政策に対して不信感を持っていた。組織にも持っていたかもしれない。それを払拭するのは、中曽氏しかできない。

黒田氏が、意見は違うが、日本経済のために、という思いは一緒だ、と中曽氏のことを思うこと。これが、これからの日本銀行にとっても、日本経済にとっても重要なことだ。また、セントラルバンカーとしての経験のなさ、市場はコントロールできるものだと思っているというバイアスがあることなど、こうした弱点を中曽氏の意見をよく聞くことで、無意識に補っていくこと――そのようなスタイルが確立すれば、リフレ政策という言葉を離れ、妥当で強力な金融緩和政策が打ち出されてくることになるだろう。

最後に、岩田規久男副総裁は、ほとんど影響力を持たないと思われる。なぜなら、そもそも副総裁は総裁に比べてカラーを出す余地がほとんどなく、実質的に審議委員の一人としての力しかないからだ。もう一つ重要なことは、政治もメディアも国民も、残念ながら、経済学者にはそれほど期待していないことが、今回の騒動でわかったからだ。

日銀は、名実ともに黒田日銀として、何物にも妥協せず、出帆していくのだ。

(撮影:梅谷 秀司)

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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