さらに、黒田氏は、財務省の意向もまったく配慮しないだろう。配慮などという発想とは無縁だ。正しいことをやるだけであり、日銀総裁としてベストを尽くすだけであり、昔属した組織など、ベストの政策には関係ないからだ。
何よりもポストに対して、極めて忠実
もちろん、組織人だし、人格者だから、人の話はよく聞くはずだ。安倍首相はもちろんだが、他の政治家の話も、財務省関係の人々の話もよく聞くだろう。ただ、よく話を聞くことと、そのとおり動くこととはまったく異なる。黒田氏は、何の背後関係もなく、自分で信じるベストな政策だけを行うだろう。
それは、日銀のスタッフとの関係においても同じだろう。黒田氏は、日銀スタッフと、とことん話し合うだろう。黒田氏のこれまでの意見はある。ただし、セントラルバンカーとしての経験はない。だから、最初は学ぼうとするだろう。それが官僚というものだ。与えられたポストに忠実に尽くす。上司、ボスにも忠実だが、何よりも与えられたポストに忠実に尽くすのだ。
だから、黒田氏は、彼として思い描く、日銀総裁のベストな姿に近づこうとするだろう。そうして、日本経済にとってベストな中央銀行としての日銀を作り上げようとするだろう。そのためには、日銀スタッフの意見は重要だ。そして、誰を信頼するか。組織の外から組織に乗り込んだ場合、その組織の中で、最も優秀で、しかし、組織のために働くのではなく、日本のために働くスタッフ、人材は誰なのかを見極め、その人間の話を徹底的に聞くだろう。
そして、おそらくそのうちの一人が、中曽宏副総裁になるのではないか。
中曽副総裁という人事も、今回の人事で極めて重要であり、かつ的確であったと思う。彼は、ニュートラル、無色透明で誠実な素晴らしい実務家だからだ。国際金融業界では世界的に厚い信頼を受け、能力の高さは誰もが認めている。それでいて、人当たりもよい。
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