さて、一国のお国事情を皆様に説明するのに一人のお話を紹介するだけでは単なる受け売りになってしまうので、今度は女性の視点からレバノン事情を皆様にお伝えしたい。今回ご登場いただくのはレバノン人女性で同じくINSEADで学ぶ、シリル・オホーダーイブさんだ。以下は、対談形式で進めたいと思う。
ムーギー:シリル、ジョーがこんなことを言ってたけど本当か? たとえばあなたはムスリムでレバノン人の女性だが、女性ということで男性支配の強い中東では不利になることも多いのか?
シリル:まず誤解があるようだが、私はクリスチャンだ。ただ仕事で結果をしっかり出していれば、宗教上の理由で不利になったことはない。
ムーギー:失礼、あなたはクリスチャンか(レバノンの宗教分裂事情に関しては前回コラムを参照)。それならばセンシティブな質問になるが、レバノンがクリスチャンの国と戦争したらどちらを応援するのか?
シリル:レバノンだ。ジョーは、レバノン人は国家の前に宗教がアイデンティティの基本になると言っていたが、私はレバノン人であることを重視している。だから戦争になればレバノンのために戦う。しかし私は自分自身をレバノン人である以前にクリスチャンだと見なしているし、非常に難しい問題だ。
ただしレバノンは長年の内戦を経て、重要な教訓を学んだ。宗教上の違いで戦争をしても得られるものは何もなく、憎しみの戦争の後に勝者はおらず、人間はお互い違いを受け入れて尊敬し合うしか生きる道はないということだ。
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