実はあなたも鉄道マニア? 秘境駅とシニアと鉄旅オブザイヤー

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鉄旅オブザイヤーとは??

「鉄旅」を選ぶというコンセプトを最初に話を聞いたときには、鉄道ファンがよだれをたらすようなマニアックなツアーを選ぶのかと思っていました。でも、今年のグランプリに輝いたのは、列車の中で長州名産の鶏肉を味わい、地元の温泉に泊まる「貸切りやきとり列車の旅2日間」。列車の中で酒と焼き鳥を味わえるのがポイントです。乗車人員が減少している美祢線を走らせるという鉄道ファン向けのつぼは押さえているものの、鉄道は決して主役ではありません。

ちなみに昨年のグランプリは、京都嵯峨野のトロッコ列車を夜間に走らせ、暗闇の中でお寺の住職による怪談ばなしや役者による怪奇パフォーマンスを楽しむ「怪奇!!京都保津川2時間サスペンス」でした。

今年の準グランプリを受賞した「欧亜国際連絡列車100周年記念号の旅」も、一見マニア向けに見えるツアーですが、「鉄道ファンの目線で“非鉄”の方に楽しんでいただけるツアーを作った」(企画担当者)とのこと。このツアーは敦賀とウラジオストックを豪華客船で結ぶクルーズプランのオプションの1つでしたが、クルーズ乗船客の4割がこの列車に乗車するコースを選択したそうです。「鉄道ファンでない一般のお客様でも特別な列車の旅は魅力的」(同)なのだ。

つまり、鉄道ファン向けに見えるツアーだとしても、旅行業界はその先にあるマス層の取り込みを狙っているのです。そしてその層はかなり分厚い。なにしろマス層に属している人自身は、自分が鉄道ファンであることを自覚していない可能性があるのですから。これは業界では常識かもしれませんが、自分にとっては新しい発見でした。

少々宣伝になりますが、現在、東洋経済臨時増刊『鉄道完全解明2013』が発売中です。この中には僕の思い込みからスタートしたものもありますが、(自分にとって)意外な「現場の事実」が判明した場合は、きちんと軌道修正して掲載したつもりです。僕自身、「へえ、そうだったんだ」と楽しみながら作りました。この連載をご覧いただいたみなさんにもぜひ手にとっていただければ幸いです。

(撮影:尾形文繁)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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