かんぽ生命、「順調な減収減益決算」の課題 運用多様化に遅れ、第3分野もまだ途上

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かんぽ生命は第一生命と提携し、運用強化を図るが・・・写真は、かんぽ生命の石井雅実社長(左)と、第一生命の渡邉光一郎社長

日本銀行のマイナス金利政策は、かんぽ生命をも沈めるのか――。

かんぽが8月12日に発表した今2016年度の第1四半期決算(4~6月期)は、経常収益が2兆2614億円と前年同期から8.6%減少。経常利益と純利益も、それぞれ443億円(前年同期比58.7%減)、194億円(同15.2%減)と、落ち込みが目立った。

減収減益は期初の計画通り

もっとも通期の計画を、経常収益で8兆4900億円(前期比11.6%減)、経常利益も3100億円(同24.7%減)と減収・経常減益で立てていたため、かんぽとしては「第1四半期までの進捗は順調」と説明している。

かんぽは郵政民営化関連法を受けて2007年に発足、2015年11月に上場生保として再スタートを切った。上場したばかりの会社が業容縮小の計画を掲げることは異例といえるだろう。

かんぽは源流を逓信省(当時)が創業した「簡易生命保険事業」にさかのぼり、今年は簡易保険100周年を迎えるという歴史がある。

かんぽのビジネスモデルは、「養老保険」「終身保険」「学資保険」といった、利幅は薄いがシンプルな貯蓄性の強い商品を、全国津々浦々の郵便局ネットワークで大量に売りさばくというものだ。バブル崩壊以来、かんぽはずっと、金利低下という逆風にさらされてきた。

運用先である国債の金利が下がれば、「貯蓄性」という商品の魅力が落ちる。保有契約は1996年度末の8432万件をピークに、この6月末時点では3214万件と、4割弱にまで縮んだ。配当負担の重い旧簡易保険契約が満期などで消滅していくため、純利益は増加基調にあるものの、経常収益や経常利益はまだ縮小に歯止めがかかっていない。今期も減収・経常減益と見通しているのはこのためだ。

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