かんぽ生命、「順調な減収減益決算」の課題 運用多様化に遅れ、第3分野もまだ途上

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値上げせずに、利ざやの減少分を、販売拡大で乗り切れるかどうか。あるいは、もし値上げするとすれば、幅をどうすべきか。顧客は利回りではなく、郵便局やかんぽの安心感、ブランド力を評価してくれているのではないか、いやさすがに値上げ幅が大きいと、顧客離れを招くのではないか―――。かんぽは「他社の動向も見ながら検討を継続していく」とコメントしているが、複雑な連立方程式の解を求め、社内では慎重にシミュレーションを繰り返しているもようだ。

こうした環境下で、かんぽが力を注ぐのが、医療保険の販売拡大だ。

主契約に特約として付加する形で販売しており、第3分野の保有契約年換算保険料ではアフラックに次ぐ2位と実績もある。医療保険はニーズが強く、収益性が金利に左右されにくいうえ、利ざやも厚い。貯蓄の魅力が乏しくなる中、特約のセット販売を基本にすれば、より保障を訴求しやすくなる。「従来の貯蓄話法から、保険本来の保障を訴えるセールスへ」とマーケティング戦略の転換を図っている途上である。

地方では圧倒的なブランド力

ところが、その方針にもかかわらず、第1四半期の第3分野の新契約年換算保険料は、前年同期の126億円から121億円へとダウンしてしまう。前述のとおり、主契約の新契約年換算保険料が2割もアップして特約も伸ばせる余地があっただけに、今後に課題を残した形だった。

かんぽの場合、高齢者と女性に強い顧客基盤を持ち、また地方で圧倒的なブランド力を誇る。高齢者は人口増が見込まれ、また社会進出が進む女性の保険料負担能力は高まっている。人口動態やライフスタイルの変化、地方創生といったトレンドからは、実はこの先10年ほど、他社がうらやむ追い風が吹いている。

果たしてかんぽが上場生保として、こうした顧客基盤などの優位性を生かした、説得力ある成長シナリオを示せるかどうか。上場直後に訪れたマイナス金利という難局に対し、販売やマーケティング、資産運用といった総力戦をいかに戦い抜くかに、その成否がかかっている。

                            (撮影:尾形文繁)

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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