中国は製造業でもアフリカに根を張っている 自動車メーカーも現地に組み立て工場

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日本貿易振興機構(ジェトロ)は今年3月末、アディスに仮事務所を再開所し、7月には開所式が行われた。サブサハラ・アフリカでは5カ所目となる事務所だ。そもそもジェトロはエチオピアで1960年代後半に開所したが、1980年代前半に閉所したという経緯がある。今回の再開所はこれからエチオピアの発展の可能性が多大にあり、日本企業の進出も支援する態勢を整えたいという背景がある、と所長の関隆夫は説明する。外務省のデータによると、エチオピアにおける日本の企業は7社だ。

「アフリカに日本が”出遅れている”というかというと、とても難しい問題だ。中国と比べると、日本だけでなくほかの西欧の国も遅れているということになるからだ。ほかの国が遅れている、というより、”中国(の進出)が突出している”というのが実情だと思う」と関は話す。「中国がアフリカやエチオピアで行っている、大規模なダムや道路建設が日本もできるか、というとそうでもない。中国は特殊なスペックや技術で行うので、中国のほうが安く速く事業を行える。日本の企業はいろいろな意味でこれはできない」。

さらに、次のように続けた。「中国の特徴は“100年の計”と言うように、まさに100年後を見据えて超長期プランで来ている。日本企業はここまで長期プランは立てていない」。

日本企業のエチオピア進出は限定的

エチオピア側は中国、日本の対エチオピア進出に対してどう思っているのだろうか。アディス市内の首相官邸執務室でインタビューに応じた大臣兼首相特別顧問(工業化担当)のアルケベ・オクバイ・メティクは、「エチオピアに対しては欧州やインド、トルコ、サウジアラビアなどさまざまな国が投資を行っており、中国だけではない」と前置きをしたうえで、次のように説明する。「中国はエチオピアが工業国に移行する計画を進めるうえで非常に重要な役割を果たしている。両国間の貿易額は他国に比べ最大のペースで増えているし、中国は我が国の鉄道、発電所などのインフラ整備事業への融資と実際のインフラ整備をしてくれている」。

アルケベは次のように続ける。「中国からの融資は我が国におけるインフラ整備のメジャーな融資元だ。中国は(インフラ整備事業で)競争力の高い価格で仕事をしてくれ、納期どおりに仕事を終えてくれる。我々は中国の仕事の質にもまったく不満はない」。

一方、アルケベは日本企業のエチオピア進出がまだ限られたものであると述べ、その理由として「当然ではあるが、日本は日本の裏庭であるアジアに集中している。そして日本はアフリカは遠いと思っていること、政府のアフリカ進出のポリシーが弱いことだ」と3つを挙げた。そのうえで「日本は世界の経済パワーだ。日本の企業にはぜひエチオピアに来てもらいたい」と述べた。

中国は、アフリカに進出する際にアフリカの政治には不干渉で、同じ開発途上国としてアフリカとはウィン・ウィンの関係を築くとの立場を掲げている。実際にはアフリカでの投資はヒモ付きと言われる方式で、借り入れ国は中国の事業者に発注し、中国の資材を使い、労働者を雇うことが求められることも多い。そして中国による融資は中国に還元される。その際に支払いは、たとえばガーナではカカオ収穫の一部を支払いに充てるといったように、アフリカの農作物や天然資源で返済するバーター形式が取り入れられることも多い。 

アルケベはエチオピアの場合も、対中国への融資返済に関しては、たとえば砂糖の対中輸出は返済金としてみなされること、また、将来的にエチオピアから輸出が始まる天然ガスや石油で返済をすることもありうる、と述べた。

こうした柔軟な融資形態が、現地では好評なようである。

(文中敬称略)

上野 きより ジャーナリスト、元国連職員

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うえの きより / Kiyori Ueno

ブルームバーグ・ニュース東京支局、信濃毎日新聞社などで記者として働いた後、国連世界食糧計画(WFP)のローマ本部、エチオピア、ネパールで働き、食糧支援に携わる。2016年から独立。慶應義塾大学卒業、米国コロンビア大学院修士課程修了。東京出身

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