手術を受ける側だけでなく、する側にとっても、やはりダヴィンチがいいという。それは、手術がしやすいからだけではない。手術後の安心感も違うのだ。
「開腹手術の場合、終わったその夜は遠くへ出かける気分になれませんでした。疲れているからではなく、どこか不安があるのです。しかし、ダヴィンチの場合はそれがありません」
技術の進化によって
技術の進化は医師を確実に助けている。では、さらに技術が進化して、AIがダヴィンチのようなロボットを使って手術するような時代はやってくるのだろうか。
「どうでしょうね。手術するたび、すべてが違いますから。ただ、ナビシステムのようなものの進化は期待できます。それよりも……」
目下のところ、大堀先生が熱望しているのは最新のダヴィンチ。2016年7月時点で販売されている最新モデルは第4世代なのだが、東京医大にあるのは第2世代のものなのだ。第3世代からコンソールが2台になったので、たとえば、片方に若手が座り、もう片方に大堀先生が座り、ビューアをのぞき「そこからはこっちで引き取ろう」と、スイッチひとつで切り替えられるのが、手術効率の面でも、また、教育や訓練の面でも、たいへん重宝するのだという。
しかし、1台およそ3億円。東京医大と言えどもそう簡単に買い換えはできないようだ。ただし、前立腺ガンと同様に“骨盤の奥深くの狭いところ”にできる子宮ガンについても、手術が保険適用対象となれば、ニーズは増え、ますますの導入が進むだろう。
せっかくなので、大堀先生の手術中の動画を見せてもらう。映っているのは大堀先生の勇姿ではなく、手術中の患者のお腹の中、前立腺のあたりである。
は、早い。小さなハサミがさくさくさくさくと切るべき所を切っていく。小さなハサミのはずなのだが、見ているとそれが小さいとは思われなくなってくる。普通のサイズのハサミで手術を行っているように錯覚してくるのだ。それくらい、細かな作業をしているとは感じさせない動きなのだ。別の動画では、これまたさくさくさくさくと、縫うべきところが縫われていく。その動きに、一切の迷いはない。
「迷わなくなりますね。開腹手術もそうですが、ダヴィンチを使っての手術でも、経験を積んで慣れるのが一番です」
輪ゴムトレーニング中の私を「上手い」と言ってくれたのは、完全にリップサービスだと確信した。
(構成:片瀬京子、撮影:梅谷秀司)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら