ネット広告の「詐欺」がなくならない根本理由

メディア選別が広告主にとって最良の道だ

「アドフラウド」は、世界では麻薬並みの社会問題になっている(Sergiy Tryapitsyn / PIXTA)

スマートフォンの普及によって、インターネット広告の市場は爆発的に伸びた。アメリカでの広告費は、1996年には6億ドルだったが、2017年には774億ドルに伸びており、実に20年で100倍だ。日本においても、2016年にはインターネット広告費の市場は1兆円を超えている〔電通「2016年(平成28年)日本の広告費」〕。

そうした中で、世界的にアドフラウド(Ad Fraud)と呼ばれる行為が横行している。これは、「Ad(広告)」と「Fraud(詐欺)」を組み合わせた造語。後段で詳述するが、昨年1年間で年間72億ドルにも及ぶ被害額があるという。いったい、どのような違法行為が行われているのだろうか。

なぜ詐欺行為が蔓延しているのか

このアドフラウドの実態について詳述する前に、インターネット上で取引されている広告の仕組みについて触れておこう。この仕組みの中には詐欺が行われる”盲点”があるためだ。

インターネットに掲載されている広告は、テレビや新聞など従来のメディアと同じく広告主が直接的にメディアと相対で取引する方法に加えて、システムを使って取引を行う「運用型広告」が存在する。運用型広告の流通現場では「RTB(Real-Time Bidding)」と呼ばれる瞬時に広告の取引を行うシステムが確立している。広告主にとってみれば、システムにすべてを委ねることができるため効率がいい。また、個々のユーザーによる検索ワードや、閲覧内容にひも付く情報をベースにして「ターゲティング」がなされており、広告のクリック率と成約率が把握できる。これによって広告効果が明確になるという建前になっている。一見すると、広告主にとって効果を実感しやすくなっており、これがインターネット広告の投資が大きく拡大する要因になった。

一方で、広告が掲載されるのは、ユーザーが持つ膨大な数の端末。広告主は、自社の広告が、どのメディアにどの程度実際に掲載されているか、正確に把握することは不可能に近い。物理的に掲出したことを確認できる、街の看板広告のようにはいかない。

そうしたリアルタイムな広告取引の複雑性の”盲点”につけ込む形で、世界的に横行しているのがアドフラウドだ。掲載された広告がきちんとユーザーに見える形で表示されているのか、もし表示されていたとしても、見ているのが本当に生身の人間なのか、という根本的な問題がクローズアップされている。

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