ネット広告の「詐欺」がなくならない根本理由 メディア選別が広告主にとって最良の道だ

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アドフラウドのような不正を見抜く各種ツールは存在する。しかし、しょせんはいたちごっこ。そこで異なるアプローチからインターネット広告の状況を変えていくべきという意見もある。

悪質なサイトのブラックリストを作るのではなく、良質なメディアのホワイトリストを作る考え方へ転換するべきというものだ。ニュースアプリ「SmartNews」を運営するスマートニュース社で、ブランド広告責任者を務める菅原健一氏は「あまりにも広告不正が蔓延していて、ブラックリストを作っても対象が多すぎてリストを作ることが難しい。本質的にはいたちごっこになるだけで、広告主が付き合っているほうがコストが高くなってしまう」と指摘する。

インターネットがオープンな世界である以上、誰でも自由にメディアやECサイトを作り、サイト上にバナー広告のスペースを作ることができる。また、対策を施したとしても、それをくぐり抜ける新たなアドフラウドの手法が生まれることも避けて通れない。そうした状況で、不正排除に血道を上げたところで、生産的とは言えないのではないかということだ。

菅原氏は、「広告主は不正を暴くことにコストをかけるよりも、上位20%のトップティアのメディア以外は取引しないという意識が重要」という考え方を示すが、これは説得力があるだろう。実際、2015年ごろからは、PMP(Private Market Place)と呼ばれる広告取引市場が登場している。これまでのオープンなオークション方式のRTB(Real-Time Bidding)とは異なり、参加できるメディアと広告主が限定されていて、掲載先の品質担保が容易になっている。

成果だけを重視しすぎることが根本的な問題か

しかし、今のウェブ運用型広告の世界では、まだ「1クリック当たりいくらコストがかかるか」というCPC(Cost Per Click)という基準が主になっていて、どこに、どのような形で広告が掲載されているかについては、本格的な関心が及んでいない。リアルの世界では、無意識のうちに大手企業がいかがわしい場所に自社の広告を出して、それが反社会的勢力の資金源になっているなどということは起こりえないが、それが起きてしまう可能性があるのが、現在のインターネット広告の世界だ。

広告主としては、掲載先の選択肢は多いほうがよいと考える面もあるため、小さなウェブサイトにも幅広く露出させたいというニーズが消えることはなさそうだ。不正排除の対策も必要だが、そもそも根本的な問題として、コストをかけて価値のある情報を提供している良質なメディアも、「フェイクニュース」を垂れ流したり、他のメディアからの盗用が横行しているようなサイトも、1つのインプレッションがあれば、それに対する広告の価値はイコールという考え方になってしまっていることが異常といえる。

そうした状況が、「どのような形でもいいから、広告が表示されたことにすれば構わない」という発想を生み、これまで述べてきたような犯罪的行為の横行につながっているのだ。今後は、広告主がインターネット広告での本質的な価値とは何かについて再考することが、健全な広告市場を守るために重要になってくるのではないだろうか。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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