聞いているだけで難しそうだ。それに対してダヴィンチの場合は、やってみたので断言できる。ルーペをのぞき込んだその先で、手になじんだピンセットで細かい作業をしているような感覚だ。手ぶれもまったく感じなかった。ロボットが自動的にブレを補正しているのだ。
東京医大ではこれまでに1800例以上、ダヴィンチで前立腺ガンの手術を行ってきたが、輸血が必要になったのはそのうちわずか4例だという。
術後のQOLにも格段の差が
ダヴィンチを使うと、術後のQOLも格段に上がる。
ダヴィンチで手術を受ける場合、患者は腹を切る必要がない。傷口が8から12ミリほどの小さな穴をたったの6カ所開けるだけだ。ここから、冒頭では輪ゴムをつかんでいた鉗子などの手術器具を入れての手術となる。なお、手術器具は毎回、完全に滅菌したものを使ううえ、何度も繰り返し使用できないようになっている。
そのダヴィンチ登場までは、前立腺ガンの手術を受けると尿失禁に悩まされることが多かった。
「尿道の開け閉めをする筋肉から剥がすようにして前立腺を取るので、どうしても筋肉を損傷してしまうのが原因です」
大堀先生の解説に引き込まれる。
ところがダヴィンチを使うと、患部がよく見えるので、筋肉はきれいに保存したまま前立腺を除去できるそうなのだ。性機能に関しても同様。なお、性機能については日米で患者の配偶者の反応が異なり、日本では「別になくなってもいい」が多数派で、アメリカでは「残さないなんてあり得ない」が多数派だそうだ。
それから痛みは、手術直後は多少あるものの、歩行にはほとんど影響がないという。もしも私が患者なら、もちろんダヴィンチを使いこなす病院を選びたい。
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