希望者殺到、ラッシュ工場見学がスゴすぎる 人気ツアーの裏にある"ラッシュの再生物語"

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商品の大半も刷新している。ラッシュブランドへの導入となる見た目の可愛い入浴剤や石鹸だけではなく、肌悩みを感じはじめた大人の女性が効果を感じられるようなスキンケア商品も強化。新鮮な材料をより活かせるよう、製法も変えた。

結果、「”昔のラッシュが好き”と残念がるお客様もいたのは事実だが、それを上回る数の新規顧客を獲得することができている」(小林氏)。足元の売上高もようやく前年を上回る水準へと回復してきた。

狙いは「ブランドの伝道師」を作ること

好き嫌いの分かれるラッシュブランド。工場見学の狙いは、ファンに"ブランドの伝道師"になってもらうことにある

ただ、いくら店舗や商品を刷新しても、どのように作られているかは顧客には見えにくい。そこで、2015年4月から始めたのが、この「ラッシュキッチンツアー」だった。

「材料の新鮮さを自らの舌で確認してもらい、人が手間をかけて化粧品を作る様を目の当たりにしてもらうことが、ブランドを理解してもらう最短ルートだと考えた」(小林氏)。

当初は不定期開催だったが、回を重ねるごとにうわさがうわさを呼び、現在は月1回、午前・午後の2回開催となっている。1度に参加できる人数は少ないが、工場の内部は生産ラインの一部を除いて、撮影し放題ということもあり、参加者のSNSを通じて、情報が広まっていった。

結果として、彼女たちは良きブランドの伝道師となってくれるのだ。「ラッシュは、熱狂的なファンがいる一方で、匂いがきつくて嫌いな人もいる、”Love or Hate”(好きか嫌いか)のハッキリとしたブランド。皆に好いてもらおうとせず、ファンの方に工場見学に来てもらい、ブランドの心髄を理解して欲しい」と会社側は言う。

人気が殺到している工場見学を、そのままブランドの再生へとつなげることができるのか。まだまだ道は長そうだ。

(撮影:尾形文繁)

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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