アップル「日本の雇用創出71.5万人」の根拠 日本市場への投資の成果をアピール

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そんな日本に対して、アップルは投資を加速している。昨年、横浜市みなとみらいに「テクニカル・デベロップメント・センター」を設置しており、同じく横浜市綱島の再開発地「Tsunashima サスティナブル・スマートタウン」にも、2つ目となる開発拠点をオープンする。

アップルの開発拠点設置については、2015年12月に安倍晋三首相が街頭演説で語り、明らかになった。今回のアップルによる日本雇用創出の情報開示で、世界最大企業が日本に対して投資を行い雇用創出に成功している点を、内外にアピールすることができるだろう。

アップルが世界投資を加速させる理由

アップルは中国市場やインド市場への投資も行ってきた。特に中国には、同社の製品の大半を製造する拠点があり、アジア市場の中心的な拠点となっている。加えて、Uberキラーといわれるタクシー配車サービス滴滴出行に10億ドルを投資し、中国政府当局に対して投資を強める姿勢をアピールしてきた。ちなみに、滴滴出行はUber中国事業と合併するとの第一報が入っている。

また、アップルが狙う次なる市場であるインドに対しても、地図などに関する研究開発拠点を設置し、またiOSアプリの開発支援拠点「iOS App Design and Development Accelerator」をバンガロールに用意した。アップルのティム・クックCEOはインドのナレンドラ・モディ首相と会談しており、製品の販売に厳しい制約がつくインド市場での柔軟なiPhone販売の許可を得ようとしている。

アップルのみならず、米国シリコンバレーのテクノロジー企業は、いかに税金を安くするか、租税回避の指摘から逃れるか、という難しい問題に取り組んでいる。アップルは消費地からの部品調達や投資という形で、この問題を解決しようとしている。これにより、資金を米国に戻す際の税金を回避しながら、必要な購買や資金を、その国の中で循環させようとしているのではないだろうか。

こうした背景があることから、日本での雇用創出のアピールは、今後、中国やインド、欧州といった米国外の市場に対する政治的・租税的な障害を取り除いていくことを狙っているとみている。

もちろん、米国に対しては、米国向けの施策が必要になる。現実味を増しつつある「トランプ大統領」の到来となると、FBI問題以降「アップルボイコット」を宣言している同氏は、米国で最も目立っているテクノロジー企業の米国への貢献を、より大きく求めてくることは、想像に容易だからだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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