ロシア人船長でも、お辞儀をする
パダルカ船長は、まるで蒸気機関車のように仕事をガンガン進めるタイプだ。何か問題が起こったとき、米国人のようにまず相手を褒めてから課題を指摘する、という遠回しなやり方はしない。ロシア流にはっきりと問題点を指摘する。
若田飛行士に対しても例外ではなかった。だが決して担当者個人の問題としては扱わない。だから仕事が早く、指摘されたほうも嫌な感情が残らない。
また「宇宙生活の達人」でもある。ISSでは予定表に書かれていないゴミ出しやトイレ掃除などの家事が目白押しだ。
「たかが家事」とあなどってはならない。ISSは1998年に建設が始まり、初期からの実験棟は築10年以上経つ。
ISSの維持は宇宙飛行士にとって死活問題であり、仕事の効率さえ左右する。だから、家事の切り盛りは、家長たる船長の腕の見せどころのひとつでもある。パダルカ船長はメンバーの仕事の状況を見ながら、実に的確に指示をし、片付けていく。
そしてどんなに忙しくても、3度の食事は一緒にとるように心掛けていたという。パダルカ氏が船長を務めた2009年5月、ISSに初めて日米ロシア、カナダ、欧州の5つの機関の宇宙飛行士が勢ぞろいした。国が違えば習慣も考え方も異なる。だからこそ、お互いの状況や考え方を言語化する時間を持つ。
何よりパダルカ船長は「クルーは家族と同じ」と考える。「仕事の情報交換だけでなく、冗談を言い合いリラックスする時間を持つことが大切」。だから、チームはいつも笑いが絶えなかった。
パダルカ船長が2010年2月に来日した際、ISS船長に何が求められるか聞いた。
「命令せずに、みなが自発的に動くようにすること。どんなリーダーにも言えることです。宇宙に行くのは非常に大きな体験で、ロマンチックなことでもあるが、生活するのは大変なことです。
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