米国流の"褒め重視"、ロシア流の"直球勝負" あなたが多国籍チームのリーダーになったら…

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言い争ったり怒ったりすれば自分たちの生活を苦しくする。相手の文化を尊重しながら助け合う。ロシア管制センターとは簡潔に話しますが、日本の管制センターと交信するときは、丁寧にお辞儀をしながら話をしますよ(笑)」とジョークを交えて話してくれた。

宇宙飛行士も、飲みニュケーションを重視!

若田がコミュニケーションを取ろうとする相手は、宇宙飛行士だけではない。宇宙の仕事には、世界各地の管制チームとの協力が欠かせない。若田はNASAはもちろん、ロシア、日本、欧州、カナダを訓練で訪れる際、管制官たちと話す時間を必ず取ろうとする。

前回の長期滞在前は、つくばで管制官や宇宙飛行士たちと焼き鳥を食べ、カラオケに行き「飲みニュケーション」で皆を楽しませた。今回も皆と飲む時間を何とか作ろうと画策している。

世界の宇宙飛行士にカラオケは好評。円滑なコミュニケーションの重要ツールだ(写真は宇宙でカラオケをする若田飛行士)
(出典:NASA)

「限られた時間の中で、短くても中身の濃いコミュニケーションの機会をいかに作っていくかがカギです」(若田)。

打ち上げまで10カ月を切った。私たちは宇宙飛行士の仕事場は宇宙と思いがちだが、ミッションの正否を分けるのは、むしろ地上での準備段階だ。5分の会話が宇宙で命を救う。

「『きぼう』日本実験棟や宇宙ステーション補給機『こうのとり』が軌道上でしっかりと機能し、つくばの運用管制チームが24時間体制で難しいISSの運用を日々成功させて、世界各国から日本の有人宇宙技術の信頼を獲得してきている。同様に、日本人がISS船長の役割を果たせることを世界に証明したい」(若田)。

日本の“エース飛行士”は、多国籍チームを成功に導けるか。若田は、日本流の「和の心」に、米国人とロシア人の師に学んだリーダー術を駆使し、難しい舵取りを乗り切ろうとしている。(=敬称略=)


 

林 公代 宇宙ライター

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はやし きみよ / Kimiyo Hayashi

宇宙ライター。神戸大学文学部英米文学科卒業。日本宇宙少年団情報誌編集長を経て2000年からフリーに。20年以上にわたり宇宙飛行士や宇宙関係者へのインタビュー、NASA、ロシア、日本でのロケット打ち上げや宇宙関連施設、皆既日食などの取材を続ける。著書に「宇宙飛行士の育て方」(日本経済新聞出版社)、「宇宙就職案内」(筑摩書房)、「宇宙へ『出張』してきます」(古川聡宇宙飛行士らと共著、毎日新聞社)、「宇宙の歩き方」(ランダムハウス講談社)など多数。http://gravity-zero.jimdo.com/

 

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