「そこは大きな課題です。宇宙機関の間で訓練実施に関するさまざまな制約がある。ロシアで行われるソユーズ宇宙船の不時着時など緊急時を想定した訓練は、命に関わることでもありISSに滞在する全宇宙飛行士が参加しますが、米国で行われるNOLS訓練にロシア人飛行士は参加していないのです。
ISSには15カ国が参加していますが、ISSへの往復でロシアのソユーズ宇宙船を使う以外のほとんどの作業は、ロシア側チームと日・米・欧・加の米側チームに分けて行われています。
たとえばロシア実験棟での実験を行うのは、基本的にロシア人宇宙飛行士のみ。船外活動でも米ロで異なる宇宙服を使う。これはISS運用に関する協定やさまざまな文書で定められています。
でも宇宙飛行士たちはひとつ屋根の下に暮らすわけです。特に緊急時は飛行士全員で迅速・確実に作業しないと対処できません。
しっかりコミュニケーションを取るため、前回のISS長期滞在で一緒に過ごしたロシアのパダルカ船長がどう動いていたかなども思い出しながら、訓練や準備を進めています」(若田)。
つまり通常は分業、しかし緊急時は全体で作業を行わなければならないというわけ。米国のスペースシャトル単独で宇宙飛行を行っていたときより、15カ国が参加するISSの作業はかなり複雑だ。
ここで、若田が尊敬する、もう1人の師が登場する。ロシアのゲナディ・パダルカ船長だ。2009年に若田がISSに長期滞在したときの船長であり、585日間の宇宙滞在経験(2009年末まで)を持つ超ベテランだ。
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