生産量が減っても、経済成長はできる 知ってるつもり!?読んでナットク 経済学「キホンのき」

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求められるものを供給すると、経済は成長する

肥料を使った野菜と、肥料を使わない野菜で価格が違うという仮定がおかしいからだ、と考える人がいるかも知れない。だが、実際にスーパーマーケットの野菜売り場に行ってみれば、無農薬野菜や有機栽培野菜などの表示で、普通の野菜よりも高い値段がついている。食料が十分に供給されなかった時代にはこのような違いにこだわる人は少なかっただろうが、必要な食料が簡単に手に入るようになった現在では、生産方法の違いに価値の差を感じる人が増えているのだ。

肥料を使わない野菜の価格が肥料を使って作った野菜より高くなっているので、実質GDPが増えたのではなくて単に物価が上昇して名目GDPが増加して見えるだけではないか、と思う人もいるだろう。しかし、図表2で、野菜の生産方法を肥料を使う方法から使わない方法へ元に戻す前後で、肥料を使って作った野菜の値段は1個10円で、肥料を使わない野菜が20円であるということは変わっていない。変わったのは、肥料を使った野菜を15個作るか、肥料を使わない野菜を10個作るかという、生産する野菜の量の組み合わせだけだ。

前出の例で、肥料の使用を止めるとGDPが増加したのは、肥料を使わない野菜には、肥料を使った野菜よりも高い値段を払うようになったという人々の価値観の変化に対して、単に量を多く供給するのではなく、より高い値段の製品を供給するという対応を行った結果である。経済全体として高付加価値製品の生産に産業構造がシフトし、それによって経済成長が実現したのだ。

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