生産量が減っても、経済成長はできる 知ってるつもり!?読んでナットク 経済学「キホンのき」

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旧式技術でも、GDPは増える

たとえば、野菜の生産量は肥料を使うことで増え、これによって実質GDP(国内総生産)は増加し経済は拡大する。これが野菜の生産技術進歩による生産性の向上であることは誰の眼にも明らかだ。ところが逆に、肥料の使用をやめて野菜の生産量が減少することでも、実質GDPが拡大することがあるのだ。

進歩どころか一見退化しているように見えるこの変化を、経済的に計測すれば技術進歩率はプラスになっている。以下ではこの例で数値を使って、GDPが増えることを見てみよう。

肥料を使わないと野菜が10個しか生産できないが、肥料を使うと15個生産できるとしよう(図表1)。GDPの計算では野菜生産のために使った肥料の費用を控除しなくてはならないが、話を簡単にするために肥料を使うコストはゼロだと仮定する。野菜の値段が1個10円だとすると、最初はGDPが10円×10個=100円だが、肥料を使うと、GDPは10×15=150円になって実質GDPは50%増加する。

ところが、肥料を使って生産した野菜と使わなかった野菜を消費者が区別するようになって、肥料を使った野菜は10円でしか売れないが、肥料を使わないで作った野菜は20円で売れるようになったとすると、状況は全く変わる(図表2)。

肥料を使って生産をしているときのGDPは150円だが、農家が肥料の使用を止めると野菜の生産量は15個から10個に減るもののGDPは20×10=200円に増加するので、実質GDPは33.3%増える。肥料を使っていなかった農家が肥料を使うようになったが、再び肥料の使用を止めた。最初と同じ状態に戻ったはずなのに、実質GDPが増えるのである。

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