「根拠なき熱狂」に沸く、日本の株式市場

円安進行なのに、中国・欧州向けの輸出は激減

今期の製造業の利益は 前年より減少する

他方で、円安が日本経済に与える悪影響はすでに顕在化しつつある。マクロ的に見てどの程度の影響があるかを試算してみよう。

日本の輸出総額は、11年の65・5兆円から12年の63・7兆円へと1・8兆円減少した。他方、輸入のうち、加工貿易に関連すると考えられるものをピックアップすると、原材料品の輸入が同期間に5・3兆円から4・8兆円へと0・5兆円減少した。鉱物性燃料の輸入は、21・8兆円から24・1兆円へと2・3兆円増加した。鉱物性燃料は、家庭用もあるので、産業用はこの半分と考えると、1・2兆円の増加だ。

ここで、輸出-原材料輸入-鉱物性輸入の半分が、輸出産業の利益を代表していると考えるとしよう。右の式で計算すると、11年の49・3兆円から12年の46・9兆円へと、2・4兆円減少していることが分かる。率で言えば、5%の減少だ。

法人企業統計によれば、11年の製造業の営業利益の総額は11・1兆円である。これと比べると、2・4兆円の減少は、その21・6%となり、かなり大きい。つまり、「円安だから輸出産業の利益が増加」というメカニズムは、いまの日本では働いていないことになる。

したがって、3月期決算における製造業の利益は、11年に比べて増収になるのではなく、減収になる可能性が高い。円安になれば、そうでない場合に比べて輸出産業の利益が増えることは明らかだから、これまでの想定為替レートの下での利益見通しより現実の利益が増加することは明らかだ。しかし、それは、昨年に比べて今年の利益が増加するということではないのである。

株価は、短期的には将来価格の期待によって変動するが、長期的に見れば、利益の割引現在価値になるはずだ。したがって、日本の株価は低下していなければならない。株価が上昇しているのは、単に短期的な売買益だけが目的の投機的なものであり、グリーンスパンが言った「根拠なき熱狂」(Irrational Exuberance)だと考えざるをえない。

(週刊東洋経済2013年2月16日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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