円安で輸出企業は本当に潤うのか 中国、欧州向け輸出が激減

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円安になったとき、日本の輸出企業は、次の2つの対応を取りうる。第1は、現地通貨(以下、ドルだとする)建て価格を引き下げることだ。こうすれば、輸出先での価格競争力が上昇するから、売り上げ数量が増加し、輸出数量が増加する。これに対応するため、国内の生産も増加する。ドル建ての輸出額がどうなるかは、需要の価格弾力性に依存する。円建て輸出額は増大することも、不変のことも、減少することもある。

第2の対応法は、ドル建て価格を不変に保つことだ。この場合、現地の売り上げ数量は不変だから、輸出数量も不変だ。よって、国内の生産も一定に留まる。ドル建て輸出額は不変でも、円建ての輸出額は増加する。このため、国内生産の利益が増える。

実際には、両者の中間となるだろう。短期的には末端価格を調整するのは難しいから、ドル建て価格はあまり変わらないだろう。だから、円安になっても、輸出数量は変化せず、国内生産を増大させることもない。したがって、輸出額が為替レートの変化に比例して増え、輸出企業の利益が増加するだけである。

輸入は円安でどう変わるだろうか。原理的には、輸出の場合と同じようなことが起きる。ただし、現在の日本では、発電用燃料のように、価格によらず一定量を輸入せざるを得ないものが多いため、輸入数量が変化せず、輸入額が為替レートの変化に比例して増える場合が多いだろう。

この場合、燃料輸入額の増加を電気料金に転嫁するまでは、電力会社の赤字が膨らむ。電気料金に転嫁されれば、利用者の負担となる。電力を大量に使う製造業では、この負担が大きく働くだろう。それは、製造業の利益を減少させ、生産に抑制的な影響を与える可能性が強い。

結局のところ、円安は、国内の生産を増加させず、電力会社や電力利用者から輸出企業への所得移転をもたらすことになる。

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