円安で輸出企業は本当に潤うのか

中国、欧州向け輸出が激減

輸出数量の激減は 最近まで回復せず

以上では、「ドル建て価格一定の場合に現地の売り上げ数量は不変」と仮定した。しかし、価格以外の要因(例えば現地の景気後退)によって、ドル建て価格が不変でも売り上げ数量が減少することがある。実は、現在生じているのは、まさにそうしたことである。

この状況は、マクロ的には、国民経済計算(GDP統計)の実質値を見ることで知ることができる。ただし、最近の円安が進行した2012年11月以降のGDP(9~12月期)については、本稿執筆時点ではまだ速報値も公表されていない。

そこで、貿易統計における「数量指数」と「価格指数」を用いて、状況を調べることとしよう(GDPの数字が得られた後でも、輸出対象国や輸出品目別の動向を見るには、この統計を見ることが必要だ。なお、「ドル建ての輸出額」も、同様の目的のために用いることができる)。

まず、世界全体に対する輸出を見ると、12年には、輸出金額指数が前年比で2・8%減少した。数量指数がマイナス4・5%、価格指数がプラス1・9%だ。価格変化の大部分は為替レートの変化によるものと考えられる。つまり、相手国の事情で輸出数量が4・5%減少したにもかかわらず、円安効果があったために、輸出金額の落ち込みが2・8%に留まったのだ。あるいは、「円安が進行したものの、それではカバーできないほどに数量が減少した」といってもよい。

12月だけを見ると、数量指数が対前年同月比マイナス12・2%と落ち込んだ。円安効果で、価格指数はプラス7・3%となった(税関長公示レートの平均値は、12年12月1ドル=82・34円で、11年12月の1ドル=77・59円に比べて6・1%の円安)。結果、輸出指数は対前年同月比マイナス5・8%に留まった。輸出額は7カ月連続の減少だ。

地域別に見ると、対中国の落ち込みが激しい。輸出額の対前年比は、12年がマイナス10・8%、12年12月がマイナス15・8%である(数量、価格への分解は公表されていない)。また、対EUの落ち込みも激しく、12年12月で、数量が対前年同月比マイナス15・6%、価格がプラス5・4%、輸出指数はマイナス11・1%である。

品目別に見た12月の輸出額の対前年同月比では、船舶が42・9%減、建設用・鉱山用機械が31・4%減などと、著しい減少を示している。自動車は6・6%減だ。「輸出が好調」と報道されている自動車も、このような状況なのである。

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