株高が続いているのは、円安のためだと説明されている。
円安についてはこの連載ですでに述べた。この原因は、日本の政策転換ではなく、ユーロ危機が一服したために世界的な資金がユーロに回帰していることだと考えられる。
現時点では国際収支統計や資金循環統計によってはこれを確認できないのだが、南欧国債の利回り低下などの傍証によってそう推測される。
イタリア国債(10年債)の利回りは、2011年秋に7%を超えたが、12年になって低下し、3月には4%台になった。12年の夏には再び6%を超えたが、秋以降顕著に低下し、最近では4・2%程度である。
スペイン国債(10年債)の利回りは、12年7月には7・6%程度にまで上昇したが、最近では5%程度にまで下がっている。
為替レートの行方は予測しがたいが、前回述べたように内外金利差がさほど大きくないこと、ユーロ危機が完全に収束したわけではないことを考えれば、傾向的な円安が続くことはないと考えられる。
以下で問題にしたいのは、為替レートと株価の関係だ。これまでは、日本の株価と為替レートの間に極めて強い相関があった。しかし、いまは、円安が日本経済に悪影響を与えつつあることに注意が必要である。
注目すべきは、円安が進展しているにもかかわらず、輸出が減少していることだ。この状況を、図に示す。12年の夏に1ドル=70円台だったドル/円レートは、12月に90円程度まで円安になった。それにもかかわらず、対中輸出は約6%減少しているのである。対EU輸出でも同様の傾向が見られる。12年夏頃から円の対ユーロレートは2割以上円安になったにもかかわらず、輸出額は1割程度しか増加していない。これは、ユーロ建てでの輸出額が1割程度減少していることを示している。
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