加藤:たとえ今までなかったものでも、高品質な教材を上手く取り入れるんですね。
松田:そうです。また、そうしていくと先生の役割が変わってきます。英語に関して言うと、リーディングやライティングだけではなく、スピーキングやリスニングをしっかり教えられる先生が必要なわけです。ディベート型やディスカッション型の授業をするのも良いと思いますが、その際の教師の役割は「ファシリテーター」に変わります。でも、先生はスーパーマンやスーパーウーマンではありません。リーディング・スピーキング・リスニングをいきなり完璧に教えろと言われても無理なことはわかっています。だからこそ、外部リソースを活用する「コーディネーター」の役割も果たさなければならないのです。
加藤:昔は自分で回答を板書して一方的にレクチャーしていればよかった先生も、ファシリテーターやコーディネーターとして立ち回る必要が生まれたんですね。
松田:ファシリテーターやコーディネ―ターと、いきなり言われても順応することが難しいのはわかります。それこそ、教師も数十年も自分たちの価値観を持って生きてきた大人ですから。なので、私たちを含む外部の機関は、「すばらしい商品・サービスを考えたから、お前ら使うべきだ」と教育現場に押し付けようとするのではなく、現場のニーズや困っている点・変えるべきポイントをディスカッションしながら、お互いに理解するように努めなければならないと考えています。
加藤:なるほど。
教育やりたい人はまず現場に入ってほしい
松田:公教育を考えてみると、やはり学校というプラットフォームをもっと活用することが重要だと思います。そもそも日本は学校や公教育を活用してここまで発展してきた国ですから。現在、学校と社会は断絶されていて、学校や教育行政のことを社会は否定していると感じています。その影響で教師も自己効力感が低くなっている。にもかかわらず、求められるものはどんどんレベルが高くなっていって現場も音を上げている状況です。
加藤:現場にも多くのチャレンジがありますね。
松田:しかし、かつての日本のように学校は社会の中心となりうる場だと私はとらえているので、社会全体でサポートしていくしかありません。貧困問題を抱えた子どもだけではなくすべての子どもたちに対して、10年後、20年後を生きていくために必要な力を、公教育の場で、現場で一生懸命頑張ってくれている先生方と連携をしながら、均等に提供できるようなインフラを作っていくということを目指していくべきです。
あとは思いを持った人に1人でも多く先生になってもらいたいです。多様な経験をしてきている人材が学校に入ってくることはイノベーションになりますから。大人はみんな教育に関心があると思っています。関心がある層が行動を起こさないということも日本の課題ではないでしょうか。問題意識を持っているのであれば当事者になってほしい、要するに、教育をやりたい人はまず現場に入ってほしいんです。社会と学校をつなげる役割を果たして活躍できる方はたくさんいると私は思います。
(構成:田中 利知、撮影:今井 康一)
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