加藤:信頼しているからこそ素直に受け止められる、また褒められると喜べるというのはありますよね。
松田:自己効力感を抱きながらビジョンに向かって一歩ずつ踏み込んでいく力は子どもたちにとって非常に普遍的な力だと私は考えています。その力を発揮している場面に私たち大人が出くわしたときに、子どもたちの意思を尊重にしてあげられるかということが重要です。
加藤:子どもの意思を尊重してあげるのって意外に難しいんですよね。
松田:たとえば「プロ野球選手になりたい」と子どもが言ったとします。「なれるわけがない」「プロ野球選手がどれだけ狭き門だと思っているんだ」「アスリートの人生なんて、30歳で終わるぞ。30歳以降はどうするんだ?」と言ってしまう場面って想定できませんか。
加藤:わかります。大人は親切のつもりで「リスクの低い選択肢」を示してあげますね。
松田:そうです。そこで「今から勉強しとけ」とか「リスクが低いだろ」とか言っちゃうわけですよ。でも、本来言うべきことは違います。「プロ野球選手にはどうやったらなれるのか、一緒に考えていこうぜ」といって、一緒に練習に付き添ったり、努力を可視化して誉めてあげたりすることが重要だと私は思います。信じてあげて、子どもの行動や考えの半歩先を照らしながら、伴走してあげるということです。
加藤:大人は、もしかしたらプロ野球選手にはならないかもしれない、というか確率的に言えばならない確率のほうが高いだろう、と思いますよね。
松田:そうですね。でも、努力を認められるそのプロセスは子どものその後の人生に大きく影響します。目標に向かって、計画を立てて、努力をする。信じてもらえる仲間が周りにいる。そのプロセスを経て培った環境が、次の目標が決まったときに「生きる力」になります。○×のテスト勉強をどれだけやったとしても、こんな生きる力にはつながりません。生きる力は子どもたちの好奇心、つまり子どもたちの小さな目標からスタートします。大人はその好奇心や小さな目標を潰しがちなのです。「おもしろいな、やってみろよ」と言ってあげるだけでも成果は変わります。
2パターンの親。やるべきことは?
加藤:保護者の方と接している中で、学校と親との関わりについてはどう思いますか?
松田:間違いなく意識改革は必要ですが、まず親がどのようなタイプの親であるのかを考慮しなければならないと私は考えています。「教育熱心な親」なのか、「教育に無関心な親」なのか。この2つのカテゴリでアプローチの仕方が変わってきます。
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