現在の国内景気は停滞気味であることは間違いありません。現状の名目GDPは約474兆円で、これはリーマンショック直後とほぼ同じです。こうした現状、景気対策としての公共投資は必要だと思います。ただ、それとあわせて、日本経済を本質的な意味で再生させるための産業政策を行うべきです。
今年6月をめどに発表されるアベノミクスの3本目の「矢」で考えられるのがこのことです。日本の強みを生かせる分野を選択し、集中して強化させること。それから、国内で製造して、付加価値をつけて海外に輸出する産業を育成すること。そういった戦略を政治主導で進めないと、日本の経済力を長期的に伸ばすことはできません。
産業政策を進めながら、短期的には景気対策を実施して経済力をつけていき、その結果、物価が2%になるのであれば、市場も起こるべき混乱をある程度吸収できます。逆に金融政策に頼り過ぎ、日銀に圧力をかけて通貨を膨張させただけで物価を2%に押し上げても、リスクを膨張させるだけだと思うのです。
物価だけが上昇すると、預金流出が起こる恐れも
今回も引き続き、安倍政権の金融政策が抱えるリスクを会計の視点も含めて考えていきます。前回は、物価の上昇に伴う市中金利の急激な上昇が、銀行などの金融機関へ多大な影響を与えるというお話をしました。では、「物価目標2%」を設定しても市中金利が2%に上昇しなければいいのではないかと思われるかもしれません。しかし、理屈の上ではこれは考えにくいことなのです。
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