両者の政策は、量的緩和という意味では、日本も米国も変わりはありません。しかし、米国の場合はインフレ下での景気回復を目的とし、日本の場合も、もちろん景気浮揚を図っていますが、まずはデフレからの脱却を目指しているという大きな違いがあります。
日本はデフレ脱却に向けて対策をとらなければならないと思いますが、今までお話ししてきましたように、「物価目標2%」の達成はかなり厳しく、また、現実に2%のインフレになった場合には、これまたリスクが大きいと言えるのです。デフレ脱却自体も難しい上に、インフレに誘導できたとしても物価上昇率を微妙にコントロールしなければならないという、とても難易度の高いことをやらなければならないのです。
産業政策を行い、「真の経済力」をつけるべき
金融政策や景気対策は、しょせんカンフル剤のようなものです。日本経済を真の意味で再生させるためには、産業政策をセットで行って成長を生み出し、景気を底から持ち上げていかなければなりません。
先にも述べたように、これがアベノミクスの3本目の矢です。産業政策はすぐには結果が出ないでしょうが、政府は長期的なビジョンを持って日本の足腰を強くしていかないと、財政問題をはじめとする多くの問題を解決できず、先延ばしのリスクを増大させるだけです。その長期的ビジョンと、その具体的な実行計画を、世界の金融界が信任するかどうかが、国債の信任を保つ上でとても大きなポイントとなるのです。
幸いなことに、世界経済は回復傾向に転じつつあります。米国経済は2012年10~12月期は、速報値ではわずかなマイナスですが、自動車や住宅の数字を見る限りでは回復が堅調になってきていますし、欧州は依然として火種を抱えていますが、小康状態であることは間違いありません。そして中国景気も、昨年末にはいったん底を打っています。ですから、そういった外的要因によって、日本経済は早くて今年1~3月期、遅くとも4~6月期あたりから景気が回復してくるのではないかと思います。
そのタイミングにうまく公共投資を実施しながら、本質的な意味で強い日本を築き上げるための産業政策をきちんと打ち出すことが肝要です。必要な対策は、けっして日銀を痛めつけることではないのです。金融政策はほぼ限界にきているという認識が必要です。繰り返しになりますが、短期的には財政赤字に配慮しながらも、公共事業などの景気対策を行いつつ、長期的な経済再建策が必要なのです。そのためには、抜本的に経済構造を変えていくような、産業政策が望まれます。
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