北朝鮮のミサイル連続発射は何を示すのか 実は朝鮮半島の非核化には前向き姿勢

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日本にTHAADは配備されていないため、政府の出した破壊措置命令に、自衛隊が準備しているのはPAC3である(写真:AP/アフロ)

「史上最強」の対北朝鮮制裁決議が採択されたが…

国連で「史上最強」と言われた対北朝鮮制裁決議が採択されたのは今年の3月2日であった。

決議案が提出されるきっかけとなったのは1月6日の核実験であり、2月7日の「地球観測衛星光明星4号」と称するミサイルの発射をまたいで議論は2カ月近く続いたが、ともかく結論が出て国際社会がホッと一息ついたことは記憶に新しい。

制裁決議の実効性のカギを握っている中国をはじめ、関係各国とも従来より一段と厳しい内容の制裁措置を実施した。国際社会の一致した強い姿勢を目の当たりにして、北朝鮮としても核実験やミサイル発射の愚かさを認識せざるを得なくなるだろうとの期待感が高まった。

しかし、その後の状況は期待とはかなりかけ離れている。制裁決議成立から2週間もたたない3月15日、金正恩労働党委員長(当時の肩書は第1書記)は弾道ミサイルの大気圏再突入シミュレーション試験を視察し、「核弾頭の爆発試験と、核弾頭搭載が可能な弾道ミサイルのテスト発射を近く実施する」と宣言。関係部署に準備を命じた(北朝鮮国営の朝鮮中央通信の報道)。厳しい国連決議は、完全に無視されたのだ。

そしてその発言から3日後の18日に、平安南道の粛川(スクチョン)付近の基地から弾道ミサイルが発射された。これは中距離弾道ミサイル「ノドン」であったと推定されている。

6月22日には、中長距離戦略弾道ミサイル「ファソン(火星)10」の発射実験に成功したと朝鮮中央通信が報道した。これは「ムスダン」と呼ばれるミサイルであった。

ムスダンは2007年に実戦配備されたと言われていたが、その後の実験は失敗続きだった。しかし、22日に発射された2発のうち1発は高度1000キロメートル超に到達したことが日本でも確認された。北朝鮮のムスダンは今や米国のグアムにも届くまで性能が向上したわけだ。

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