すなわち北朝鮮にとって、安全を脅かす国は米国だけである。米国からすれば、これは荒唐無稽の議論に聞こえるかもしれないが、それは事実だ。ミサイルの発射実験を視察した金委員長は「太平洋作戦地帯内の米国を全面的、現実的に攻撃できる確実な能力を持つことになった」と米国を刺激することを言っているが、これは強がりにすぎず、金委員長にとっても米国は脅威である。
現実を直視しなければならない時が来ている
米国も日本もこれまでいわゆる6者協議を重視してきた。なかでも中国が積極的に北朝鮮に働きかけることを希望してきた。しかし、中国は北朝鮮の安全確保の問題を解決できるわけではなく、6者協議が効果的でないのはすでに明白になっている。
もちろん、中国の事情だけが重要なのではない。米国も日本もそれぞれ可能な範囲で対応するのは当然だが、そこから前に踏み出さない限り、北朝鮮の安全確保の問題も、したがってまた、核とミサイル問題も解決しない。この現実を直視しなければならない時が来ている。
米国は、オバマ大統領の下で北朝鮮問題についてどこまで新しい方針をとることができるかよくわからないが、来年早々発足する新政権は本稿で述べたような問題点を直視して新政策を打ち出してもらいたいものだ。
北朝鮮はさる5月の初めに36年ぶりに朝鮮労働党大会を開催し、体制固めを行い、金氏は党委員長に就任している。その後、ミサイルの発射実験などは継続しつつ、外交活動も強化している。7月6日には、核問題に関する声明を発表し、米韓を非難しつつも朝鮮半島全体の非核化には前向きであることを示した。これは在韓米軍の核の撤去をも要求に含んでいるが、米国として注意に値する声明である。北朝鮮は核やミサイルの実験を繰り返しつつも、米国に対し、交渉を働きかけているのだと思う。問題はそれを受けるのか、受けないのか、だ。
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