ニーステロ事件は「フランスの亀裂」を深めた ムスリムの移民たちは、さらなる差別を懸念

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海岸沿いの遊歩道にはテロの犠牲者を追悼して、多くの花束が捧げられていた。©Kiyori Ueno

ラフエジブフレル容疑者が19トントラックで暴走した遊歩道「プロムナード・デ・ザングレ(英国人の散歩道)」は、五つ星のホテルや高級レストラン、アパートが立ち並ぶ通りだ。その前に広がるビーチには白や青のパラソルが並び、真っ青な地中海の海辺で水と戯れる人々の姿が見られる。遊歩道では多くの市民や観光客が散歩をしたり、ジョギングをするなどし、輝く太陽のもと夏のバカンスを楽しんでいる。

世界屈指のリゾート地で悲劇は起きた

「プロムナード・デ・ザングレ」の名は、18世紀に冬の間、地中海の暖かい気候と美しい眺めを求めてニースに来ていた英国貴族たちに由来している。この名の通り、ニースにはフランス国内だけでなく、世界各地からセレブリティを含め多くの観光客が集まる場所で、世界でも屈指の高級リゾート地となっている。ラフエジブフレル容疑者がトラックを暴走させ、花火の見物客を次々となぎ倒したのは、まさにこの遊歩道だった。

ラフエジブフレル容疑者が暮らしていた地域。移民が大多数住んでいる。©Kiyori Ueno

一方、ラフエジブフレル容疑者が暮らしていたのは、海外沿いの遊歩道から4キロほど北東の移民が多く住む労働者階級の地域だ。その近くには“HLM(Habitation à Loyer Modéré)”と呼ばれる、低所得者層用の高層アパートが何棟も建つ。ラフエジブフレル容疑者の自宅アパート付近のカフェや食料品店で買い物をする人々の中には、ヒジャブ(ムスリムの女性が頭にかぶるスカーフ)姿の女性たちも多く見られる。この地域に住む大多数は同容疑者と同じフランスの旧植民地・保護領である北西アフリカのマグレブ(チュニジア、アルジェリア、モロッコなどの国々)の出身で、彼らにとり、“高級リゾート地ニース”は遠い存在だ。

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