ニーステロ事件は「フランスの亀裂」を深めた ムスリムの移民たちは、さらなる差別を懸念
南仏ニースの郊外に住む、モロッコ移民の両親を持つ36歳のサイード・ウアビッドは、フランスで生まれ、ニースの大学院で経営と経済の修士号を取った。その後就職しようと活動したが仕事は見つからなかった。結局、フランスでの就職をあきらめて、まず英国、その後アイルランドへ行き、保険会社で職を得た。5年前に結婚をするためにニースに戻ってきたが、やはり仕事はなかった。仕方なく自分で自動車販売の会社を立ち上げた。
「当時、ニース、マルセイユ、パリなどの会社に200も300も履歴書を送ったが、仕事は得られなかった。仕事に就けなかったのは自分のアラブの名前のせいだと思っている」とサイードは言う。「実際に、以前フランスで短期間仕事をしていた時、上司から『顧客に名前を言わない方がいい』と言われたことがある。自分のアラブの名前はフランス人を不愉快にさせるのだ」。
繰り返されてしまった大規模テロ
7月14日夜、ニースの海岸沿いで暴走する大型トラックが群衆に突っ込み、子どもを含む84人が死亡し、200人以上が負傷したテロは、フランス中を深い悲しみと怒りで覆った。フランスを襲った大規模テロは、2015年1月のシャルリー・エブド襲撃事件以来、18カ月間で3回目。2回目のテロである2015年11月の同時多発テロでは130人が犠牲になっている。今回のテロは、オランド大統領が非常事態宣言を解除した直後に起きた惨事だっただけに、フランス人のショックは大きい。
テロの容疑者とされるモハメド・ラフエジブフレル容疑者は10年ほど前にニースに来たチュニジア人で、配達の運転手をしていた。同容疑者がテロを起こしたフランス革命記念日は、国中で宗教を超えてフランス建国の理念「自由・平等・友愛」を祝うはずの日でもあった。
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