ニーステロ事件は「フランスの亀裂」を深めた ムスリムの移民たちは、さらなる差別を懸念

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ニース市内の店のドアには「私はニースだ」と書かれたサインが貼られていた。©Kiyori Ueno

誰がテロリストか分からない

一方で、フランス人の移民に対する偏見や不信感も根強く、今回の事件後、それが露呈している。

「このようなことは大きな声では言えないが、イスラム教は暴力的で性差別的な宗教だと思う。それに、移民たちはフランスに来ると自由をはき違えて何でも好きなことをできると思っている」。アルジェリアで生まれ、12歳まで育ったという初老のフランス人女性は訪れていたニースのテロ現場近くの追悼所で言った。「それに彼らは昔、植民地としてフランスに抑圧されていたから、フランスに対して報復をしたいと思っているところがある」。

これらの移民に対して排斥を掲げ、フランス国内で勢力を伸ばしているのがマリーヌ・ル・ペン率いる極右政党・国民戦線(FN)だ。同党が下院で持つ2議席はいずれも移民が多く、移民に対する不満を持つ人も多い仏南部の選挙区だ。ルペンは2012年の大統領選挙でFNの大統領候補者としては最高記録の約18%の得票率を獲得した。フランスは来年大統領選挙を控えており、テロが起きるごとに支持を伸ばしてきた極右政党の大統領誕生が現実味を帯びるかどうかが注目されている。

テロ現場近くの追悼所を訪れていた別のフランス人女性は、「今も多くの移民が地中海を越えてフランスに来るが、この中にはテロリストもいる。誰が本当の移民で誰がテロリストか分からない。とても怖い」と話した。「フランスで極右政党を支持する人は増えると思う」。

先述のバス運転手の男性は、「フランス人は肌の色で我々を判断し、差別的な目で見る。私は外国に行けばフランス人と言われるが、フランスではフランス人ではない。移民とフランス人は融合していない」と言う。両親がモロッコ移民のサイードは語気を強めてこう言った。「自分はフランスで生まれたフランス人だ。ここにはフランスという1つのコミュニティしかないはずだ」。

(文中敬称略)

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