ロバート・キャパ、戦争写真のミステリー あの傑作は、誰が撮ったのか?

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タローの死はキャパにとって衝撃だったに違いないが、彼はその後も戦争の取材を続けた。第2次世界大戦では、連合国軍の第1陣とともにノルマンディーのオマハ・ビーチに上陸し、命がけで戦争写真の傑作を残した。

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ロバート・キャパ《Dデイ、オマハ・ビーチ、ノルマンディー海岸》1944年6月6日 ゼラチン・シルバー・プリント、横浜美術館蔵、© ICP/Magnum Photos

キャパ、最後の写真

名声を博したキャパは、女優のイングリッド・バーグマンと恋仲になり、映画出演中の彼女の写真も撮影している。1954年には毎日新聞社の招きで日本を訪れた。そして『ライフ』誌の要請を受け、東京からバンコク経由でインドシナ戦争の取材に向かう。

インドシナ戦争は最後の取材となった。最後にシャッターを押したとされるのが次のカットだ。この後、田んぼを前進するフランス兵を撮ろうとして道からそれ、地雷を踏んで亡くなった。まだ40歳だった。

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ロバート・キャパ《ナムディンからタイビンへの道、ヴェトナム》1954年5月25日 横浜美術館蔵、© ICP/Magnum Photos

展示室にはタローの作品83点、キャパの実弟から横浜美術館に寄贈されたキャパの作品193点のほか、写真が掲載された雑誌などが並ぶ。

冒頭の「崩れ落ちる兵士」をどちらが撮ったのか、謎は完全に解けていないが、自分の目でプリントを見られる貴重な機会だ。タローを知ることで、キャパの写真が今までと違って見えてくるのが面白い。

ヤングさんはこう語る。「勇気、忍耐力、仕事への熱意、写真に対する一貫性のある態度と、キャパがタローから大きな影響を受けたことがわかると思います」。

2月3日(日)には、沢木耕太郎さんの講演会も開かれる(15:00~、定員240人、先着順、無料)。

 

「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」
開催中~3月24日(日)
横浜美術館
横浜市西区みなとみらい3-4-1
TEL 045-221-0300
10:00~18:00(入館は17:30まで)
木曜休館(1月31日木曜は開館)
一般1,100円 

仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

週刊誌のカルチャーページの編集・執筆を経て、美術展、ラジオ、本などについて取材、執筆。全国の美術館と温泉をめぐり歩いている。

 

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