今回の知事選では、川内原発が立地する薩摩川内市でも三反園氏の得票がわずか7票ではあるが伊藤氏を上回った。三反園氏を支援した「川内原発建設反対連絡協議会」会長の鳥原良子さんは「商売をしているので名前を名乗れないだけで、地元でも原発に反対する意見は根強い」と説明する。特に熊本地震発生後、薩摩川内市内でも余震が続いていることから「住民の原発への不安感は大きい」(鳥原さん)という。
原発周辺地域でも脱原発の民意
「川内原発から30キロ圏内の住民意識はすでに大きく変わってきている」
こう述べるのは、東京女子大名誉教授で「安全・安心研究センター」の広瀬弘忠代表取締役だ。
同センターは再稼働を前にした2014年11~12月にかけて、重大事故時に避難や屋内退避を求められる川内原発30キロ圏在住の360人を対象にアンケート調査を実施した。そこでは、「川内原発で事故が起こった場合に避難できるか」との問いに、対象者の65.6%が「おそらく安全に避難できない」「安全に避難できない」と答えている。また、「国の原発事故対策は十分か」との質問には「あまりできていない」「まったくできていない」との回答の合計が79.8%に達している。「県や市町村の原発事故対策は十分か」との問いに対しても、「あまりできていない」「まったくできていない」の合計が80%に上っている。
広瀬氏は「川内原発周辺の道路事情を調べたが、事故時にスムーズに避難ができるとは考えられない。有効な事故対策がない中で、住民が原発の再稼働に厳しい目を向けるのは当然だ」と指摘する。こうしたことからも、三反園氏がマニフェストで「避難計画の見直し」を打ち出したことは時宜にかなっている。
こうした住民意識の変化はほかの原発周辺地域でも起こり始めている。安全・安心研究センターは5~6月にかけて、静岡県の浜岡原発31キロ圏内(緊急時の避難区域)に住む360人を対象に、川内原発と同様の住民アンケート調査を実施した。ここでも事故への不安を感じる人や再稼働を危険だと思う人の割合がそれぞれ60%を超えた。再稼働に「やや反対」「絶対反対」を合わせた回答も63.6%に上っている。
このように原発に対する住民意識の変化は鹿児島県に限ったものではない。住民意識の変化を認識せず、対話の姿勢すら見せなかった鹿児島県政に住民がノーを突き付けたことを目の当たりにして、背筋を寒くしている原発立地県の知事は少なくないだろう。
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